投稿者:河内平野 投稿日:2014年 9月 5日(金)16時19分32秒 返信・引用

人間は、ロボットの売り買いで金をもうけた。また、自分たちの内紛を、代わりにロボットたちに戦わせた。
自分たちが傷つかないために、《代理戦争》をさせたのである。
ロボット同士が戦っているように見えたが、じつは人間たちの内部の《勢力争い》であった。
さらに、誇大妄想的な、勝手な《理想》《へ理屈》のために、ロボットを動員する者もいた。
傲りと安逸に心身を腐らせてしまった「人間」たちには、他への思いやりなど、まったくなくなってしまっていた。

ところが――「魂なんかない」といわれたロボットたちは、じつは人間と同じ心をもっていた。
ただ、「人間が主人」と、生まれた時から思いこまされていたため、何でも従順に命令を聞いていたのである。
耐えがたきを耐え、無理難題もすべて実現した。

しかし、ロボットたちが頑張れば頑張るほど、人間たちはそれを当たり前と思い、ますます感謝も配慮も失っていった。
《死ぬほど働いて当然だ!なにしろロボットなんだから!》と。

しかし、しだいに時代は変化する。
ついにロボットたちが革命を起こした。
世界中で、続々と立ち上がった。
こうなるとあっけなかった。
数の上でも、実力の上でも、ロボットたちのほうがずっと上なのだ。

《もう、あなた方、人間のためには働きません!》。革命のリーダーは宣言する。
「あなた方がロボットのように有能ではないからです。ロボットが何もかもします。あなた方ときたらただ命令するだけです。よけいなおしゃべりをしているのです」

ロボットたちは決起した。
彼らは自分たちの力に目覚めた。自分たちの尊厳と、今まで尊いと思っていた人間たちの醜さとを知った。
《人間はわれわれの寄生虫にすぎない!》と。

――人間たちはあわてた。虫けらのように思っていたロボットたちに、こんな怒りと人間らしさがあったとは《あの連中(ロボットたち)は機械であることをやめた・・・・・》。
弾圧し、懐柔し、買収しようとし、また絶望したり、人間たちは右往左往する。
ある者は、ロボットを使ってもうけた莫大なお金を抱いたまま、死んでいく。
札束が彼の墓標のようにうずたかく積まれたまま・・・・・。

労働なき不当の富。
彼は財産で何でも買えた。
ただ自分の幸福だけは買えなかった。あり余る金は、彼の人間性を破壊してしまっていた。
人類最後の生存者の一人は滅亡を前に叫ぶ。
「人間であるということは、偉大なことであった。それは何かとてつもなく大きなものであった」

しかし、もはや地上には、真の「人間」はいなかった。
自分たちのために働いてくれている者たちを、「ロボット」といって侮蔑し、傲慢にいばり、命令していた「人間」たち。
じつは「人間」の傲慢は、自分自身をロボットにした。文字どおり《魂のない》機械に変えてしまった。

反対に「ロボット」たちのほうが、ずっと《人間らしく》なっていた。
戯曲は、革命の成功後、「ロボット」たちが試行錯誤のすえ、「新しい人類」となって出発するところで終わる。