投稿者:河内平野  投稿日:2014年11月23日(日)09時52分53秒    通報
地底の底の底――「星(希望)からもっとも遠い」場所で、永遠にふるえている。
ダンテがどれほど「裏切り者」に厳しかったか――。

また彼は「客人への裏切り」(守るべき者を守らなかった罪)にふれ、
ここには「生きながら魂だけ地獄に落ちてくる」とする。
体は生きていても、その中には、すでに悪魔が入っており、魂だけ地獄に来ている者もいる、と。

仏法では「悪鬼入其身(悪鬼其の身に入りて)」(開結四四二頁)と説く。
私も多くの人間に裏切られた。
仏法の世界における裏切りは、その瞬間から生命は地獄である。
何よりそのことが哀れでならない。

このほか『神曲』のイメージは、すべて、一度読むと忘れられないほど強烈である。
因果の悲喜劇の光景が、鮮やかな色彩で描かれている。
たとえば「浪費家」と「ケチンボ」が、胸で重い荷をころがし、たがいにぶつかっては、
またひき返し、「なぜ貯めるんだ」「なぜ浪費うんだ」と永遠に叫んでいる姿。

金銭に振り回され、結局は金銭によって苦しむ人間の業を書いている。
また「嫉妬の罪」をつぐなうため、まぶたに穴をあけて鉄線で縫いつけられ、
光を見られないようにされている人々もいる。
彼らは「よりよい光」を見るのを好まなかった罪の報いを受けているのである。

「怠惰の罪」をつぐなうため、「早く早く」といつも走り続けて休めない人々も。
思い当たる人もいるかもしれない。

また暴力者の中には、先祖の財産を食いつぶした者も「自分への暴力者」に含まれている。
(いばらの中を走り回り、犬に追いかけられて体を引き裂かれる)

かつて、こんな「ふがいない二代目」の笑い話を聞いたことがある。
アメリカの有名な大富豪が、ホテルの部屋をとった。
フロントは「息子さんは、いつももっと上等の部屋をとられますが?」
富豪は言った。
「そうかい。彼には金持ちのおやじがいるが、わしにはいないんだ」

先人が苦労して築き上げた《宝城》の尊貴さを、苦労を知らぬゆえに、
安易に考える青年であってはならない。

正法を守り、正法を流布しゆくための《民衆の城》を、断じて悪から守りぬき、発展させていただきたい。

【イギリス青年部総会 平成三年六月二十九日(全集七十七巻)】