投稿者:河内平野  投稿日:2014年10月15日(水)11時37分7秒
何度もご紹介しているが、
この祭典には、インドのガンジー記念館館長のラダクリシュナン博士にもご出席いただき、あいさつをしていただいた。

その前日の懇談の折、私は博士に「インドの本で《この一冊は》といえる名著は何でしょうか」と質問した。
博士は「まず第一に」として、ネルー初代首相が書いた『インドの発見』という本をあげられた。

ネルー首相については、ノーマン・カズンズ氏も、私との対談の中で、「まれに見る哲学と知性の政治的指導者であった」とたたえられていた。

哲学と信念をもった政治的指導者――今こそ、求められているものであろう。
ご存じのとおり、ネルー初代首相は、先ごろ亡くなられた(一九九一年五月)ラジブ・ガンジー元首相の祖父にあたる。

ラダクリシュナン博士は、私がラジブ・ガンジー首相にお贈りした詩(獅子の国 母の大地)を、首相夫人や、二、三十人の方々の前で朗読したとおっしゃっていた。
ささやかながらの親愛の気持ちを喜んでいただいたようで、私もうれしかった。

さて、この『インドの発見』という本。
これは、インドの独立が達成される三年前の一九四四年、ネルーが、わずか五ヶ月で書き上げたものである。
しかも、場所は、二年と十ヶ月にわたることになる。九度目の投獄のさなか――獄中であった。

短期間で、捕らわれの身で書かれたとは想像できない、千ページにも及ぶ大作である。
ネルーは、その不屈のペンで、インドの偉大な歴史や国民性を描こうとした。

本当のインドのすばらしさを書くことによって、他国の支配に苦しむ同胞たちに勇気を、そして誇りをあたえようとしたのである。
その精神は、学会の同志が、学会の真実の歴史をつづり残そうとしているのと相通じるかもしれない。

正義の魂は、どんな困難にあっても、絶対に屈しない。
どんなに理不尽な圧力を受けようとも、否、それが激しければ激しいほど、より鋭い言論で、悠々と打ち返していく。

ネルーの信念は、むしろ度重なる投獄によって、鋼鉄のごとく鍛えられていったといえる。
《自分は、一歩も退かなかった。戦った。勝った。一点の悔いもない》と言いきれる、大満足の人生を味わえるかどうか。ここに信仰の眼目がある。

人がどうかではない。自分の心が満ち足りるかどうかである。
これが人生の真髄であろう。そのためには、どこまでも信念を貫くことだ。
負けないことである。生きぬくことである。前へ前へと歩みきっていくことである。

【創立記念勤行会、第四回東京総会 平成三年十一月十七日(全集七十九巻)】