2016年11月26日 投稿者:まなこ 投稿日:2016年11月26日(土)08時22分42秒 通報 編集済 【池田】 現代の若者たちに見られるそうした性の放縦の傾向は、物質主義的な文明の圧力に押されて、彼らの生命自体が衰弱化しているところにその真因があるのではないかと私は見ています。弱りきった生命から、どうしてみずみずしい愛の精神が生まれるでしょうか。 かねて博士は「愛の働きに、現代の状況を乗り越える方向がある」と主張しておられます。私はその御見解にはもちろんうなずけるのですが、さらにその愛自体を生み出し、支える、もう一歩深いところに基点を置かなければ、真に現実的な力とはなりえないのではないかと感じます。 性に人間的道義性を回復させる道としては、まず若者たちの精神を抑圧している物質主義的な力を除いてやることが先決でしょう。それと同時に、愛を支え、愛を生み出す根源の生命自体を開発し、躍動させ、強めていくことが必要です。私は、それを可能にするものが何であるかが問われるべきだと考えます。 【トインビー】 性の放縦を正すものとして期待できるのは、積極的な方法だけでしょう。性の放縦は、人類の未来に対する信念と希望の喪失を示すものです。それを癒すものとしては、まぎれもなく若い世代に生気を吹き込む――といって空想的なものではない――何らかの目的を与えてやることです。 性の行為を律するどんな規範体系も、たしかに神聖不可侵のものではありません。といって、もし人間の性関係が何らかの規範体系によって律せられていなければ、人間の生活は獣的なものになってしまいます。この規範体系とは、人間が他の動物と共通にもつ生理機能のうちでも最も厄介な性というこの機能に、人間の尊厳を与えるものでなければならず、またそのことがはっきりと認められるものでなければなりません。 Tweet