2016年11月25日 投稿者:まなこ 投稿日:2016年11月25日(金)08時31分28秒 通報 編集済 【池田】 まったく、戦争がもたらす倫理観の恐ろしいほどの低下は、いつの時代でも同じですね。 【トインビー】 戦争は悪です。ただし、科学的精神は悪ではありません。ところが知らず知らずのうちに、しかも間接的にですが、この科学的精神は現代の無法化を、とくに性関係において助長してきたと私は思っています。科学が倫理上もつメリットは、真理の発見とその直視に寄与することです。科学はあらゆる伝統的な信念、しきたり、風習に挑みます。 性行為に関する伝統的なしきたりは、どこの社会でも程度の差こそあれすべて抑制的なものでした。私は、これは倫理上正しいことだと考えます。しかしながら、規制というものは、厳しければ厳しいほど、それを破ることが頻繁となり、悪質なものとなり、その違反を慎重に隠そうとする行為も、ますます偽善味を帯びてくるものです。現代の子供たちは、正規の学校教育を通じてだけでなく時代精神を通じても、真理への科学的情熱と、まやかしに対する科学的侮蔑心をもつよう教えられています。その結果、今日ではクレディビリティ・ギャップという形で、親や政府の威信が、したがってまた権威が失墜しています。現代っ子たちは、性関係についてもその他のことについても、親たちの言行は一致していないと頭から疑っているわけです。 このことがもし性行為に関する伝統的しきたりへの現代の反抗の一因であれば――私はそうだと信じていますが――若者たちは、その性の行動を規制しそうにはありません。公的機関が抑圧的な措置を加えても、あるいは性的禁欲主義への自主的な運動が起こっても、彼らをその気にさせることはできないでしょう。 Tweet