投稿者:まなこ 投稿日:2015年11月 9日(月)19時42分20秒   通報
■ 権力者の「邪見」を破る戦い

名誉会長: 実は、妙荘厳王品は「一家」のことのようだが、それだけではない。「王の一家」「権力者の一家」です。権力をもった人間を信仰させて、一国を救うという物語なのです。
これがないと、民衆の苦しみが続く。「生活の多くの問題の七割、八割は政治の在り方に関わっている」と言う人もいるくらいだ。
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妙荘厳王本事品から
世尊、此の我が二子已に仏事を作しつ。神通変化を以って、我が邪心を転じて仏法の中に安住することを得、世尊を見たてまつることを得せしむ。此の二子は是れ我が善知識なり。宿世の善根を発起して、我を饒益せんと欲するを為っての故に、我が家に来生せり。(法華経 p657)

世尊(雲雷音宿王華智仏)よ、この私の二人の息子たちは、すでに仏の行いをなしました。神通変化を私に見せて、誤った教えに執着する私の心を転換し、仏法の教えの中に安心して住し、仏にお会いできるようにしてくれました。この二人の息子は、私の善知誠です。(私が)過去世に積んだ善行の功徳を呼び起こして、私に利益を与えるために、我が家に生まれて来たのです。
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斉藤: そう思います。妙荘厳王品でも、王を仏法に導こうと、はじめに決意したのは、仏その人でした。

須田: 「爾の時に彼の仏、妙荘厳王を引導せんと欲し、及び衆生を懸念したもうが故に、是の法華経を説きたもう」(法華経 p649)
仏法の最高の教えをもって、「邪見の国」を救おうとしたのです。

達藤 その仏の心を知ったゆえに、浄蔵と浄眼の二人は、父母に法華経を聴かせようと決意します。

名誉会長: 「師匠の心に応えよう」という決然たる行動であった。
■ 「父を思いやるゆえに」

遠藤: 二人は、まずお母さんの浄徳夫人に相談します。すると母は「お父さんも一緒に、仏の説法を聴きに行きましょう。お父さんに、そう言いなさい」と答えます。
二人は嘆きます。「私たちは『正義の王者(法王)』の子ども(仏弟子)であるのに、こんな邪見の家に生まれてしまった!」と。

名誉会長: しかし母は強い(笑い)。
「嘆いていて、どうなるのか!グチはやめなさい!現実を変えなさい! 」と、励ます。

須田: はい。「あなたたちは、お父さんのことを思いやってあげなさい」と。

名誉会長: ここが大事だ。相手の幸福を願う強い強い思いが根本です。その慈悲がなければ、不平不満であり、グチです。現実に引きずられ、負けているのです。
二人の兄弟も「こんなに信心しているのに、どうして!」と思ったかもしれない。しかし、それは感傷です。「こんなにやっているのに」などと、後ろ向きになっていれば、その一念のせいで結果が出ないのです。
信心は感傷ではない。信心は勇気です。幸福になるには、勇気が必要なのです。母の浄徳夫人には、慈愛から出る智慧があった。
ゆえに、「王様に、いきなり仏法の話をしても、聴く耳をもたないだろう」と知っていた。そこで、父の“攻略法”を教える。

斉藤: こう教えます。「神変(神通変化)を現して見せなさい。お父さんが、それを見たら、きっと心が晴れ晴れとして、素晴らしいと思われるでしょう。皆で、仏様のもとへ行くことを許してくれるでしょう」

名誉会長: さすがに夫の心理をよく知っていた(笑い)。偉大なことの起源には、必ず、だれか女性がいる」という言葉があるが、この母ありて、父が変わり、一国も変わった。つまり、母は、「お父さん、どうか変わってください!」と言っても無駄だと思っていた。
反対に、「お父さん、私たちは、こんなに変わりました!」と言って、見せなさいと教えたのです。

須田: 二人は、さっそく父のもとに行って「神変」を見せます。空中に高く登ったまま、自由自在に歩き回ったり、寝て見せたり、体から水を出し、火を出し、大空に満ちるような巨大な姿になったり、小さくなって見せたり。

遠藤: 空中で消えたかと思うと、たちまち地上に現れ、水に飛びこむみたいに地面に飛びこみ、あるいは水の上を大地を歩くように歩いて見せました。

斉藤: それらの「種種の神変」も、すべて「父を念うが故に」と説かれています。
梵本(サンスクリット語本)には、夫人が兄弟に「あなた方が慈愛の心で、お父さんに対すれば、お父さんもまた慈愛の心を起こして、あなた方の心をわかってくれるでしょう」(趣旨)と言ったと説かれています。

名誉会長: 事実、妙荘厳王は、二人の神変を見て、「大いに歓喜」した。子どもが立派に成長して喜ばない親はいません。

遠藤: 王は、子どもに合掌して、こう言います。「一体、お前たちは、だれを師匠にして、こんな力を得たのか。一体、だれの弟子になったのか」。
二人は、「今、法華経を説いておられる、彼の如来こそ、私たちの師匠です。私たちは、その弟子です」と胸を張ります。

須田: そこで、父は「そなたたちの師匠に、ぜひ、お会いしたい。一緒に行こう」と、自ら申し出ます。

遠藤: もう「入信一歩手前」です(笑い)。

斉藤: いや、心では、すでに仏法を受け入れていたと言えるでしょう。

須田: 作戦は見事に成功し、王の心は“落城”したわけです。