投稿者:まなこ 投稿日:2015年11月 8日(日)09時20分17秒   通報
■ 陀羅尼は呪文か?

名誉会長: ところで「陀羅尼品」の「陀羅尼」という意味を、はっきりさせておかなければいけないね。 あまり聞き慣れない言葉だと思っている人も多いでしょう。

遠藤: 先ほど、薬王菩薩が唱えた「陀羅尼呪」を見ました。
「安爾(あに)、曼爾(まに)、摩禰(まね)、摩摩禰(ままね)」(法華経 p639)云々と。これで四句ですが、こういう感じで四十三句、続きます。

須田: まるで「呪文」ですね。

遠藤: 「呪文」なんです(笑い)。

斉藤: 意味も一応、あるんですね。

遠藤: ええ。一応、サンスクリット語や『正法華経』(竺法護訳)などを参考にして訳すと、大体、次のようになり ます。
「仏の覚りの境地である寂滅・解脱の境地は、一切の衆生に対して平等に苦悩を除く。内なる清浄な常住の平等な相を見すえ、それに基づいて安穏である。それを教団の人々に信受させ安穏にさせる。巧みな言葉は尽きることなく、尽きない幸福を広げて、顧みることなく広大に進むであろう」
ただし、あくまで、これは要旨だし、さまざまに研究されているようです。

斉藤: 一般的には、「呪文である」「まじないの言葉である」としてすます場合が多いようです。

名誉会長: 鳩摩羅什が、あえて中国語に翻訳しなかったとろに、意味があるでしょう。
須田: もともとの音を、そのまま漢字で羅列しただけですから。

名誉会長: 「陀羅尼」という言葉そのものも、サンスクリツトの「ダーラニー」を、そのまま音写したんだね。

斉藤: はい。漢訳だと「総持」です。「能持」「能遮」という意味があります。天台の説明(法華文句)によれば、仏の言葉を「しっかり持つ」ことで、「悪を遮り、善を起こす」ことができると。
「ダーラニー」のもともとの言葉は、「記憶し持っている」ということです。「支える」「維持する」という語源からくるようです。

名誉会長: それで、「総持」 —- 総て持つというわけだね。たしか『正法華経』では、陀羅尼品でなく総持品と訳されていた。

遠藤: はい。「総持」とは、「総て持つ」「教えをすべて心にとどめて持つ」という意味になります。
法華経には「陀羅尼」という言葉自体は、実はもう十回ぐらいは出ています。
法華経の序品には、「法華経の会座に集った菩薩たちは、陀羅尼を得ていて、巧みな弁説で人々を不退転の境涯に導ける」と説かれています。この場合の「陀羅尼」は、「仏の教説を記憶し持っている」という意味です.

名誉会長: 古代の文明では、大切な教えは文字に書きとどめないで、暗誦し、心にとどめていく習慣があった。「師が説いた教えを深く心に刻んで忘れない」 —- 。これが「陀羅尼」の本義でしょう。
要するに、「憶持不忘」です。師匠の言われた言葉を断じて忘れないことです。
〈「憶持不忘」は普賢経にある言葉。「憶持して忘れじ」と読む。御書には「此の経をききうくる人は多し、まことに聞き受くる如くに大難来れども憶持不忘の人は希なるなり」(p1136)とある〉
これを「聞持陀羅尼」という。それから「旃陀羅尼」というのもあったね。

須田: それは、陀羅尼を「繰り返し唱える」という意味になります。
「百千万億無量の旃陀羅尼」(分別功徳品、法華経 p512)という、すごい回数の旃陀羅尼が出てきます。

遠藤: 題目も、これくらいあげると、すごいでしょうね(笑い)。