投稿者:まなこ   投稿日:2015年 8月11日(火)12時41分8秒     通報
■ 法華経には、どんな蓮華が

名誉会長:さて、いよいよインドだが、「蓮華」については古代から広く知られていて、ヒンドゥー教でも重要な中心的位置を占めているね。

須田: はい。インド最古の宗教文献とされる『リグ・ヴェーダ』にも、蓮華のことが出てきます。

名誉会長: それでは、法華経においては、どんな「蓮華」が登場するのだろうか。

斉藤: 法師功徳品には、赤、白、青の蓮華が出てきます。「赤蓮華香、青蓮華香、白蓮華香」(法華経p587)と。梵語の経典で該当するところを見ますと、赤蓮華(紅蓮華)にあたるのが、パドマ(波頭摩)です。これは白いスイレンですが、桃色の変種もあるようです。
青蓮華とは、ウトパラ(優鉢羅。ニーロートパラ(青いウトパラ)とも)という青いスイレンです。白蓮華とは、プンダリーカ(芬陀梨華)という白いハスです。
この「プンダリーカ」白蓮華が、法華経全体の経題になっているわけですね。

名誉会長: サンスクリットの経典では、蓮華は、普通、青・黄・紅・白の順で出てくるそうだ。最後に出てくる白蓮華が、もっとも高貴で尊厳とされている。
法華経は最高の教えだから、サンスクリットでは『サッダルマ・プンダリーカ・スートラ』、白蓮華の経典とされているのです。

須田: 法華経には、この他に、クムダ(拘物頭)という夜咲きの白または赤のスイレンが挙げられています。その他には、妙音菩薩の住む東方世界の仏・浄華宿王智仏の名の「華」は、カマラという赤いハスです。

名誉会長: なかなか、くわしいね。黄色いハスは、どうですか。

須田: 鳩摩羅什訳以外の法華経には、「黄蓮」が出てきます。(竺法護訳『正法華経』の歎法師品(羅什訳では法師功徳品)・総持品(同、陀羅尼品))
ただし、現実には、黄色のハスやスイレンはインドにはないようです。

遠藤: アメリカのミシシッピ河流域などには、黄色いハス(キバナハス)が、あるようです。

須田: 空想上のことですが、密教では、赤・白・青・黄の他に「黒色の蓮華」もあるとされます。

斉藤: ちょっと想像しにくいですね(笑い)

名誉会長: 仏典では、さまざまな色の蓮華が説かれている。ある経典では、釈尊が「出家前に過ごした家の庭に、青蓮華、紅蓮華、白蓮華が植えられていた」と回想している。蓮華は、夏の暑さに清涼感を与えてくれる。インドは日本よりも暑さが厳しいのでいっそう、その思いがあったかもしれない。

斉藤: 御書にも出てくる阿耨池、つまり「清涼池」にも、蓮華が生えているとされます。これは、インド人が考えた理想郷ですが、理想郷には、蓮池が欠かせないようです。
阿弥陀仏の極楽浄土も、蓮で覆われています。

須田: インドの「蓮華」重視は、インダス文明以来の伝統のようです。
有名なモヘンジョ・ダロ遺跡からは、頭に蓮の花をつけた“大地の女神”と思われる像が、出土しています。

名誉会長: モヘンジョ・ダロ遺跡といえば、3、4000年以上も前の遺跡でしょう。
そのころから、「蓮華」が重要視されていたとは興味深いね。しかも「大地(の女神)」と「蓮華」が結びついているところに注目したい。
地涌の菩薩という「人間の蓮華」も「大地」から出現した。そこには仏法上の深義は別にして、インド文化のひとつの伝統的なイメージが背景にあるのかもしれない。
もちろん断定はできないが、今後の研究に待ちたいところです。