投稿者:だいせーどー   投稿日:2015年 7月10日(金)16時45分35秒     通報 編集済
テレビでおなじみにの若手憲法学者、木村草太先生のブログからです。

【憲法と国際法 2015-07-07】

じゅりさんからご質問をいただきました。

憲法優位説に立った場合、国際法上集団的自衛権が認められていたとしても、国際法よりも憲法の効力が優先するので、集団的自衛権の行使は認められないという結論になることは分かります。

一方、国際法優位説にたった場合はどうなるのでしょうか。
国際法上、集団的自衛権の行使が義務づけられているのであれば、憲法上集団的自衛権の行使が禁止されていても、憲法よりも国際法の効力が優先するので、集団的自衛権の行使は認められることになると思います。
一方、国際法上、集団的自衛権の行使が許容されているに留まる(行使は認められているが義務付けられてはいない)場合に、憲法で集団的自衛権の行使を制約することは可能なのでしょうか??

というご質問。
まず、国際法と憲法のどちらが優位するか、という論点は、授権関係の話である場合
(憲法は国際法の部分秩序なのか、各国憲法が承認したので国際法ができたのか?)と、

効力関係の話である場合
(両者が矛盾したときに、「国内法として」どちらが優先するか?)があり、

授権関係では国際法が優位するが、効力においては各国の内部では憲法が優位する
といった議論もありえます(私は、この立場を支持する傾向を持っていますが)。
ただ、集団的自衛権については、
国連憲章で行使が義務付けられるわけではないので、
各国が、政策判断や条約や憲法や法律で、行使を制限することは、国際法上は各国の判断に委ねられます。
法律ではバイクに乗れても(国際法ではバイクに乗れても)
うちの大学の規則ではバイク通学は禁止(その国の憲法ではバイクは禁止)という話と一緒ですね。
この場合、バイクに乗る法律上の権利はあっても大学の規則で行使できなくなっている。
この場合、バイク通学をすると
法律には違反しないが、大学規則違反になる
(国際法違反にはならんが、憲法違反になる)ということになるでしょう。
なお、日本の憲法98条では国に国際法遵守義務を課しているので
政府が国際法違反をすると、
まず、国際法違反になり、かつ、憲法98条(国際法を守る憲法上の義務)違反にもなるということになります。
いずれにせよ、日本に集団的自衛権の行使を義務付けた国際法はなく、
今回の違憲、合憲論争に、国際法は決定打にならないでしょう。

【木村草太の力戦憲法】

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

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