投稿者:まなこ   投稿日:2015年 7月 3日(金)12時40分59秒     通報
斉藤: 「命じて家業を知らしめる」という段です。「知らしめる」とは、管理させるということです。
しかし、どんなに自由に管理しても、「自分のもの」ではありません。まだ仏の智慧という財産は、自分のものにはなっていません。

須田: 日蓮大聖人が一生成仏抄で、「若し心外に道を求めて万行万善を修せんは譬えば貧窮の人日夜に隣の財を計(かぞ)へたれども半銭の得分もなきが如し」(御書p383)と言われていることを思い出します。

遠藤: しばらくして、父は“息子”の心根がようやく立派になり、かつての卑屈な心根を恥じ、大きな志に立ったことを見てとった。
そこで、父は臨終に際して、親族や国王・大臣らを集めて、告げた。
「諸君、この人物は実は我が子なのである。私の実の息子である。家出をして五十年間、放浪していたのだ。本当の名はこれこれだ。私の名はこうだ。一生懸命に探していたが、ここでたまたま出会うことができた。今、私は、自分のすべての財産をこの子に譲る」と。息子はこの真実を知って、この上ない歓喜に包まれた。
「この素晴らしい財産を、求めずして、おのずから手に入れることができた」と。

斉藤: ついに息子の志が高く大きくなったからこそ、そこで名乗りがなされ、全財産が譲られた。
衆生の機根が高まったからこそ、真実の教えである法華経が説かれた。そして、成仏という無上の宝緊が与えられたのです。

須田: この「長者窮子の譬え」が、釈尊の五十年間の教説の次第を示していると見たのが、天台大師です。天台大師は、牛乳を精製して醍醐を作る過程に譬えて、「五味」という教判を示しています。
これは「五時」の教判として有名です。一覧にしてみますと、次の通りです。

長者窮子の譬え 意味 教説 五味
子を見つけて追わせる 擬宜 華厳 乳味
屋敷で働くよう誘う 誘引 阿含 酪味
父子の信頼が強まる 弾呵 方等 生蘇味
家業を管理させる 淘汰 般若 熟蘇味
家業を正式に相続 開会 法華 醍醐味

遠藤: 法華経は「仏法の醍醐味」ですね。法華経を知らなければ、仏法の本当に“おいしい”ところを知らないことになります(笑い)。
釈尊がはじめ自らの悟りの世界を、あらあら示しました(華厳)。しかし、二乗には全くわからなかった。そこで、釈尊は、人々の低い志に合わせて、低い目標を設定した小乗の教えである阿含経を説いた。
次に、志が高い人々のために、大乗の諸経典を説いた。けれども二乗たちは、小乗の教えに執着して、大乗の教えを見向きもしなかった。

斉藤: 二乗たちは、そのことを回想して、“一日の給料をもらえただけで、いっぱいもらえたと満足していて、さらにもらおうとは思わなかったようなものである”と言っています。

名誉会長: 少欲知足は大切だが(笑い)、正法に対しては貪欲であらねばならない。欲を消し去るのではない。何を欲するかが大事なのです。「煩悩即菩提」です。無上の悟り、菩提を求める欲は、即ち菩提となる。
“自分は、この程度でいいのだ”というのは、謙虚に似て、実は、生命の可能性を低く見る大慢なのです。

遠藤: 二乗たちは、小乗の小法に執着して大乗に向かいませんでした。そこで、釈尊は、二乗を厳しく弾呵したのです。
信解品で、四大声聞は「昔、釈尊は、菩薩の前で、声聞で小法に執着して求める者を非難されたことがあった。それは、実には、大乗をもって教えようとされたのでした」と振り返っています。「大乗」とは、唯一の真の大乗である法華経のことです。これが仏の真の「財産」です。