投稿者:信濃町の人びと   投稿日:2015年 4月22日(水)12時00分52秒     通報
小説 新・人間革命18巻  飛躍より

山本伸一が、平和憲法の擁護を訴えたのは、深刻な経済危機が進む日本の行方が、ナチスが台頭したドイツのワイマール体制末期のような事態になりかねないことを憂慮したからである。

ワイマール憲法は、民主主義の典型ともいうべき、当時の世界の先端をいく憲法であった。

ところが、深刻な生活不安に悩むドイツ国民は、ナチスという強力な勢力に、その不安の解消を期待した。そして、首相のヒトラーに全権を委任する授権法案が国会で可決されたのだ。

それは、国民が自らの権利を放棄させられたことに等しかった。

その結果、ナチスの独裁を許し、ワイマール憲法は形骸化され、人間の尊厳も、民主主義も、無残に踏みにじられ、あの悲惨な歴史がつくられていったのだ。

人びとの幸福を実現するために、「生命の尊厳」と「人間の精神の自由」を、また、「民主主義」を、そして、「平和」を守り抜くのが、仏法思想を実践する創価学会の使命であると、伸一は考えていた。

その意味で、基本的人権の保障、国民主権、恒久平和主義をうたった日本国憲法の精神を守ることの重要性を、彼は痛感していたのである。

もちろん、時代も、社会も大きく変化していく。それにともない、長い歳月の間には、条文の補強や調整が必要となることもあろう。

しかし、日本国憲法の精神自体は、断じて守り抜かなければならないというのが、伸一の信念であった。

その思いを、彼は一ヵ月前の本部総会で語り、青年部に平和憲法の擁護を訴えたのである。
平和を死守する人がいてこそ、平和は維持されるのだ。
恒久平和とは、平和のための闘争の、連続勝利の帰結なのである。

青年たちは、伸一の意見に大賛成であった。
以来、何度となく討議を重ね、憲法の精神を守るための具体的な運動を練り上げていったのだ。

野村勇は、叫ぶように訴えた。
「われわれは、戦後日本の精神遺産である日本国憲法の精神を、一人ひとりの信条にまで高めていくために、この総会でアピールを採択したい」
場内は大きな拍手に包まれた。