投稿者:河内平野   投稿日:2015年 3月27日(金)10時06分30秒     通報
御書に「市の中の虎」という言葉がある。(伝教大師の言葉を数カ所で引用されている)

末法において、戒律を持った聖人のような人間はいない。
そんな「人間以上の人間」にみせかける悪い僧侶は、「町の中に虎がいる」ようなもので、ありえない――ウソである。
だまされてはいけない! たぶらかされるな! という意味である。

中国に、こんな話がある。
ある国(魏)の王子が大国(趙)に人質にとられることになった。
王子とともについていく忠臣が、出発の前に王さまに言った。

「王さま、今、一人の人間が『市場に虎が現れた!』と言ったら、それを信じますか?」
「いや、信じない」と王さま。

「では、二人の人間が、『市場に虎が現れた!』と言ったら、王さまはそれを信じますか?」
王は「『もしかしたら』と疑うだろう」と。

「それでは三人の人間が『町に虎が現れた!』と言ったら、王さまは信じますか?」
「うん、それならば、わしは信じるだろう」

忠臣は、そこで言った。

「そもそも、市場に虎が出るはずがありません。それにもかかわらず、
たった三人の者が口をそろえて言っただけで、虎が現れたことになってしまうのです」

――それほど人間はだまされやすい。自分で考えてみようとしない。

忠臣は「王さまは、私が、この都を離れて遠くへ人質になって行ってしまうと、私の悪口をたくさん聞くでしょう。
私をおとしいれようという人間は、三人どころではありません。しかし、絶対に信じないでください」

王さまは「わかった、だまされない」と約束したが、やっぱりだまされてしまい、忠臣は迫害されることになった。

『戦国策』(紀元前一世紀の書)に出てくる話である。(「戦国策」の魏の巻から)

【池田大作全集第八十八巻 (関西代表者会議 1997.5.17 関西文化会館)】