投稿者:河内平野  投稿日:2014年10月12日(日)09時49分50秒    通報
ご存じのように、明年は「創価ルネサンスの年」と決まった。
「ルネサンス(人間復興)」という言葉は、不思議な魅力をもっている。
心を揺り動かす新鮮な響きがある。

歴史。芸術。哲学。世界。ロマン。あらゆる《人間的》な要素をあわせもった、精神の華をイメージさせる。
歴史的に見て、ルネサンスとは、どういうものであったか。
いつごろからを指すのか。

その動因は何か――。
これは、さまざまな見解があり、断定的には述べられない。
今も、学者の間では議論の多いテーマである。

一説には、今から約六百年前、十四世紀に活発になったとされるルネサンスの運動。
それは、「停滞」から「躍動」へ、「束縛」から「自由」への大転換であった、と一般的には見られている。

その転換の本質は何か。
十九世紀スイスの著名な歴史学者ブルクハルトは、それを、「世界と人間の発見」であったと述べている。(イタリア・ルネサンスの文化 中央公論社)。

暗黒時代ともいわれる中世。
宗教の権威は人々を縛り上げ、搾取し、自由を奪い去っていた。
そこでは、一人の人間である前に、どの党派、団体に属しているのかが重んじられた。

人は、個性をもった主体的な存在ではなく、いわば匿名――名前のない存在であった、と。

ルネサンスは、そうした権威の鎖を断ち切った。
迷妄の覆いを取り去った。
人間の自由の《翼》をあたえ、望みさえすれば、自分で自分の精神を高められることを教えた。

そして、解放された「ルネサンス人」は、自由に歩き、自由に考え、自由に語り始めた。
世界の広さと、人間の尊厳を発見した。
それが画期的な人間復興、文芸復興の波となり、潮流となっていった。

《人間は、自分自身のなかに、あらゆる存在になりうる生命の芽をもつ》。
ここに一つの、ルネサンスの人間観があった。――これがブルクハルトの描くルネサンス像である。

【全国青年部幹部会 平成三年十月二十七日(全集七十九巻)】