投稿者:大仏のグリグリのとこ 投稿日:2018年 2月25日(日)08時44分1秒   通報
さて、話をもどします。

雪山にこもって、ひたすら修行に励み、成仏の法を求めていた童子を、
はるかに高い天界から見下ろしていた者がいました。

それは帝釈天です。帝釈は一生懸命に修行をしている童子を見て思います。

「魚の子は多いけれども、その中で立派な魚に成長するものは少なく、
アンラジュの花は多く咲くけれども実を結ぶものは少ない。

人もまた同じである。成仏を願って仏法を求める人は多いけれども、
退転しないで、仏道修行を全うして仏になる人は少ない」と。

そして、帝釈は童子の本心を試してみようと、恐ろしい鬼の形相に姿を変えて童子の前に現れます。

ちょうどその時、童子は「諸行は無常であり、これ生滅の法である」という声を聞く。
そのなかに悟りの法があると感じた童子は、目の前に現れた鬼神に法を求めるのです。

今度はその時の童子と鬼神の話のやり取りを見ていきます。

【童子】
もしかしたらこの言葉は、あなたが述べたのではないですか。

【鬼神】
俺に言葉をかけてくれるな。何日も食べてないので、飢え疲れて正念を失い、
もうろうとしている。ことによると、たわごとをいったのだろう。
ぼんやりとした意識で言ったので、何をいったか知ることもできない。

【童子】
確かにあなたが言った言葉です。半偈を聞いたということは、
半分の玉を得たようなものです。どうか残りの半偈を説いてください。

【鬼神】
お前はもともと悟っているのだから、聞かなくても恨みはなかろう。
自分はいま飢えに責められているから、ものを言う力もない。
だからいっさい俺に向って言葉をかけるな。

【童子】
では、なにか食べたら説いてくれるか。

【鬼神】
食べたら説けるだろう。

【童子】
それでは何を食べるのか。

【鬼神】
もうこれ以上は聞くな。もし、食べたいものを聞けば、
きっと恐れをなしてしまう。もはやお前が求められるものではない。

【童子】
そのものさえ言ってくれれば、試しに求めよう。

【鬼神】
俺はただ人間のやわらかな肉を食べ、人間のあたたかい血を飲むのだ。
いままで空を飛び、求めてきたけれども、人を守る仏神がいるので、思うように殺すことができない。
だから仏神の捨てた衆生を殺して食べているのだ。

【童子】
あなたの食べ物はここにある。外に求めることはない。
わが身はまだ死んでいないから肉はあたたかい。
わが身はまだ冷えていないから血もあたたかい。
どうか、残りの偈を説いてください。この身をあなたに与えよう。

【鬼神】
だれがお前の言うことを信用できるのだ。残りの偈を聞いた後に
お前が約束を破ったら、誰を証人としてそれを糾明できるのだ。

【童子】
この身は最後には死すべきものである。無駄に死んでしまう命を法のために捧げるならば、
望外の喜びである。梵天・帝釈・四大天王・十方の諸仏・菩薩を皆、証人としよう。
その上で私は偽ることはできない。

【鬼神】
もしお前の言うことが真実ならば偈を説こう――。

このような話のやり取りがあった後、鬼神は法座に座り、
残りの偈である「生滅を滅し已(おわ)って寂滅を楽と為す」と説いたのです。
・・・明日につづく

※この対話の内容からどんな教訓がくみ取れますか ?
皆さんも一緒に考えてみませんか ?