投稿者:赤胴鈴之助 投稿日:2017年 8月 9日(水)03時14分14秒   通報
21世紀への選択 『コーラン』に反映されたムハンマドの生い立ち P64

池田
西アジアで生まれたユダヤ教、キリスト教、イスラムという三つの宗教の関係につ

いてですが、イスラム自体が、それをどう考えていたかが、『コーラン』で明言されてい

ますね。

一つは、ユダヤ教とキリスト教とイスラム教は、同じ一つの宗教の、異なった歴史上で

の現れであるということです。

[※編集部注例えば『コーラン』には、次のような言葉がある。

「(ユダヤ教徒やキリスト教徒に)言ってやるがよい、〈中略〉アッラーのことで我々と言い

争いをしようというのか。アッラーは我々の神様でもあれば、お前たちの神様でもあるものを。

〈中略〉我々が誠の限りをつくしておつかえ申すのはアッラーのみ」〔二・二三〕

「われらはアッラーを信じ、われらに啓示されたものを、またイブラーヒーム(アブラハム)と

イスマイール(イシュマエル)とヤアクーブ(ヤコブ)と(イスラエルの十二)支族に啓示された

ものを、またムーサー(モーセ)とイーサー(イエス)に与えられたものを、またすべての予言

者たちに神様から与えられたものを信じます、われらは彼ら(使徒たち)の間に誰彼の差別は致

しません。われらアッラーに帰依し奉ります」〔二・一三〇〕

「聖典を授けられた人々(ユダヤ教徒・キリスト教徒)は立派な知(神の啓示による特別の知識)を

戴いておきながら、しかも互いに嫉み心を起して仲間割れを起した」
〔三・一七〕(井筒俊彦訳『コーラン』、岩波文庫)]

テヘラニアン
そうです。

ユダヤ教、キリスト教、イスラムは、それぞれの伝統のなかで、いずれも一神教の始祖

としてアブラハムを崇敬するゆえに、しばしば等しく「アブラハムの宗教」と呼ばれます。

ゾロアスター教も一神教であるし、それゆえにペルシャをイスラムが征服した後、ゾロアスター教

の教えはイスラムによって「聖典の宗教」として認められました。

池田
イスラムの創始者ムハンマド(マホメット)は、モーセやイエスと等しく預言者であり、しかも、

ムハンマドは「預言者の封印」、すなわち最後の預言者であるこれが、イスラムの認識ですね。

テヘラニアン
そのとおりです。

池田
そこで、ムハンマドの生涯について、何点かおうかがいしたい。

ムハンマドは、西暦五七〇年ごろ、アラビア半島のメッカで生まれたと伝承されています。

また、メッカの有力な部族の一つであるクライシュ族に属していたといわれます。

父親は、ムハンマドが母親の胎内にいるときに死去し、母親も六歳のとき世を去ったため、

ムハンマドは叔父によって養育されました。しかも、非常に貧しかった。

テヘラニアン
そうです。ムハンマドは幼いときに多くの試練を経験したのです。両親との死別の影響も

見逃せないでしょう。

ムハンマドは二十五歳のとき、好運にも年上の裕福な寡婦ハディージャと結婚します。

それからは、経済的に恵まれた生活を送りました。