2014年9月1日 池田先生の指導です。① 投稿者:河内平野 投稿日:2014年 9月 1日(月)17時15分10秒 返信・引用 昔、感動して見た作品に『チャップリンの独裁者』がある。 その結びの演説は、あまりにも有名である。長いので、一部の紹介になるが――。 「わたしは皇帝などになりたくありません」 「わたしは人を支配したり、征服したりしたくありません」 「わたしたちは、お互いの不幸ではなく、お互いの幸せのために行きたいと思っています。」 「わたしたちに必要なのは。機械ではなく、人間性です。頭のよさよりも親切と思いやりが必要なのです。人間らしさがなければ、人生は暴力的になり、すべてが失われるでしょう」 「兵士のみなさん! あなた方を軽蔑し、奴隷にし、何を考えたり、感じたりするべきか、そんな個人的な生き方にまで指図する非人間的な者たちのいうなりになってはいけません。かれらはあなた方を猛訓練し、飼育して、家畜のようにあつかった末、大砲の的にするだけなのです。人間とはいえないこうした者たちの意のままになってはなりません。かれらは機械の頭と機械の心を持った機械人間です! でも、あなた方は、機械ではない、人間です! 人類愛にあふれる人間です!」 「兵士の皆さん! 奴隷になるために戦ってはいけない! 自由のために戦ってください!」 「幸福を生み出す力をもっているのは、あなた方、普通の人々なのです! あなた方は、人生を自由で、美しくまたすばらしい冒険にあふれたものにする力を持っています」 「民主主義の名の元にみんなでひとつになりましょう!」(以上ラジ・サクラニー『チャップリン』上田まさ子訳、佑学社)。 チャップリンは、ナチスによる「ユダヤ狩り」と戦うこの映画を大戦中に作った。 最も人間的な「笑い」によって、最も非人間的な「暴力」と戦ったのである。 製作中から激しい妨害を受けたが、一九四〇年に完成。 当時アメリカはまだ参戦しておらず、非難も多かったが、現在では、もっとも早くヒットラーの本質を見抜き、描いたとして不朽の評価を得ている。 さらに、戦後のアメリカを恐怖のどん底におとしいれた、いわゆる「赤狩り」(共産主義者迫害) すなわちマッカーシズムの嵐にも苦しめられた。 そして、ついにヨーロッパに帰ることになる(彼はイギリス出身)。 世界一の「自由の国」のはずのアメリカからも追放されてしまった。 歴史には、しばしば、こういう狂気の時期がある。 そうした試練を越えて、偉大な人間は、また「自由の精神」は鍛えられていく。 こうした弾圧のさなかでも、彼は使命に生きぬいた。 彼は、真の「人間」だった。 状況に左右される、いわゆるロボットではなかった。 《何があろうと、私は人々に「笑い」を与えよう! そして「勇気」を与えるんだ!》 ――こうして、できあがったのが名作『ライム・ライト』である。(一九五二年完成。この直後、アメリカ追放となる) チャップリン自身を思わせる老優カルヴェロが、足が麻痺して絶望しているバレリーナの娘テリーを励ますシーンで、 「人生は美しい! 生きることは素晴らしい! 君は、いつも病気(悩み)のことばかり考えて、暗く、うつむいている。それじゃあ、いけない。人間には『死ぬ』ことと同じくらい、避けられないことがあるんだ。それは『生きる』ことだよ!」 さらに 「宇宙を運行させ、地球を回し、木々を育てている力と同じ力が、きみのなかにもあるんだ」と励ます。 チャップリンは、人生の哲学者であった。 その哲学は過酷なまでの苦闘の実践から生まれたものであり、観念ではなかった。 彼の熱い血潮と一体であった。 彼の人生観を凝縮した次の言葉も、この『ライム・ライト』の台詞だったと思う。 「『生きる』ために必要なのは、ただ、ほんの少しのお金と、そして『勇気』なんだよ」と――。 Tweet