投稿者:河内平野  投稿日:2014年11月21日(金)09時55分50秒    通報
私の友人で、世界的作家のアイトマートフ氏は、
自身の故郷キルギスの「民衆の英知の泉」にいつも立ち返り、
みずみずしい《人間の真実》を語り続けておられる。

キルギスの民話といえば「賢い乙女」の物語を聞いたことがある。
貧しいけれども聡明な乙女が、その知恵のすばらしさのゆえにハーン(王様)の妃に選ばれ、
ハーンをみごとに助けていくという物語である。

ハーンの花嫁選びの試験としてむずかしい質問が出されていた。
その一つに「真実とウソの間には、どれほどの距離があるか?」と。
金持ちの娘たちはだれも答えられない。

しかし、その貧しい乙女はいとも簡単に答える。
「ウソと真実との距離は、たった指四本分の距離にすぎません。
耳と目の間の距離です。
なぜなら、私たちの耳は、たくさんのウソを聞きますが、私たちの目は、つねに真実を見るからです」と。

無認識な悪口や無責任なうわさ話に惑わされず、
どこまでも自分の「目」で真実を確かめ、真実を見抜いていく。

キルギスの乙女は、その自分の確かな「目」を信じていた。
もちろん現代では「作られた映像」もウソをつく。
「見た」ものが「真実」とは限らない。

ウソも複雑になり、高度になっている。
その分、より賢明にならねばならない。

現場での「なまの事実」を尊重する揺るぎなき良識と、
「根拠は何か」を厳しく問う鋭い知性が必要になっている。

ともあれ牧口初代会長も「認識せずして評価するな」とよく言われた。
その意味から、アイトマートフ氏のような《具眼の友》をもっていることは私どもにとって幸福である。

【イギリス最高協議会 平成三年六月二十三日(全集七十七巻)】