投稿者:一人のSGI 投稿日:2017年 8月23日(水)00時09分57秒   通報 編集済
川田:私達にとって最も関心の深いのは、何といっても次の世において、再び人間として
生まれてくる場合です。
その宿業のいかんによっては、動物とか、またアミーバなどに転生することもないとは
言えませんが、非常にこみいってきますので、ここでは、人間として再び生まれてくるという
ケースに限る事にします。
としますと、発生学上からも、受精現象をとりあげざるを得ないのですが - 。

池田:卵子と精子の結合ですね。受精という現象に即して、一個の生命が顕在化するのです。

川田:受精については、くわしいメカニズムなどは省きますが、成熟した精子が、成熟卵子の表面の
一部を裸出させて、そこから進入していきます。
精子というのは、ちょうどオタマジャクシのように、頭があり、尾がついています。
卵子の中に突入するとき、尾を切り離して頭の部分だけが中央に進んでいきます。
そして、卵子の核と結合して人間生命に固有な”精卵細胞”が生じるとされています。
そのあと、受精した精卵細胞が分裂を開始するわけです。
医学的に概略を述べますと、以上の様ですが、成熟した卵子と精子はともに、一個の生命体で
すね。

池田:卵子は卵子としての生命体です。同じように精子も、きわめて小さいながらも、それ自体で
立派な生命的存在です。

川田:そうしますと、人間生命の誕生というか、顕現は、どの時点で可能になるのでしょうか。

池田:医学的見地に立てば、精子の頭部が卵子の核にまで達して、結合した瞬間に、私達の生命の
「我」が顕在化するのです。

川田:受精した精卵細胞は、卵子と精子との結合したものでありながら、すでに人間生命という別の
生命体になっている、と考えてよいのでしょうか。

池田:卵子も精子も、一個の細胞です。卵子には卵子の、精子には精子の特有な働きがあるでしょ
う。
精卵細胞も一個の細胞であることにかわりはありません。
だが、外観的には、同じ様に、細胞的生命でありながら、受精した精卵細胞の機能は、卵子と
も精子とも異なっているはずです。

北川:それにしても、私達の生命といえども、その誕生の瞬間には、たった一つの細胞であるという
のは、おもしろいですね。

池田:一個の受精した精卵細胞は、すでに人間生命そのものです。その中には、六十兆もの細胞体へ
と分裂し増殖することによって、肉体と精神の絶妙な働きを作り出すための、基本的な情報も
すべて含まれています。

川田:それでは、受精する以前の、卵子と精子としての生命はどうなったのでしょうか。
精卵細胞という別の生命体に変化したと考えるべきでしょうか。

池田:表面的な現象を追っていけば、そのようにとらえることもできるでしょう。
しかし、人間生命の側から、受精という現象を捉えなおすと、卵子の核と精子の頭部が融合し
たその瞬間に、卵子及び、精子としての生命は、この結合によって生じた精卵細胞のなかに冥
伏してしまう、と考えられる。
精卵細胞は、卵子と精子の機能を組み入れ、それらの働きに即しながらも、まったく新しい
有情としての脈動を開始するのです。

川田:でも、精子と卵子の結合という現象がなければ、死の状態で冥伏している生命の「我」は、
再生する場を得ることはできないわけですね。

池田:仏法用語を使うと、受精現象は、転生する生命体にとって、その働きを助ける「縁」になりま
す。
つまり、助縁です。
受精現象を助演としながら、一つの生命体が、死の状態から生へと移るのです。
そして、受精の瞬間、宇宙生命自体に冥伏していた人間生命の三身が、その精卵細胞によって
あらわれでるのです。

いいかえれば、宇宙自体を色心としていた死の生命が、一個の細胞に凝縮すると表現できま
しょう。
冥伏していた人間生命の三身が精卵細胞に凝縮するからこそ、たったひとつの細胞の中に、
未来の人間像をきずきあげるための基本的な能力がそなわることになるのです。