投稿者:寝たきりオジサン 投稿日:2017年 1月 9日(月)15時10分0秒   通報
特別寄稿「わたしと地球の環境展」の開催に寄せて―

共生の理想郷・シマネ.

山陰中央新報2014年3月6日(木)

創価学会名誉会長池田大作
◇喜びあふれる希望の大光を◇
大好きな島根は、空が光り、海が光り、人の心も光り輝く天地です。

清々しき島根の友と明日への夢を語り合った、あの日この日が蘇ります。

宍道湖を染める夕日を「夢のなかに差す光」と讃えたのは、小泉八雲(ラフ
カディオ・ハーン)です。八雲は「大地のよろこびと美とを感じる」山陰の
人々の心を敬愛していました。

人と自然が調和する島根で「わたしと地球の環境展」が開催されます。同展
は、国連が定める「持続可能な開発のための教育の10年」

「生物多様性の10年」を支援する催しとして、2011年から全国各地を巡回し
てきました。近年、頻発する異常気象やPM2.5による大気汚染など環境問題
が憂慮される中、日本の故郷・島根から地球の未来を照らす機会になればと
願っています。

山陰中央新報社はじめ、ご関係の皆様方に、心から感謝申し上げます。

島根は、日本のみならず地球の宝土(ほうど)シマネです。
隠岐は昨年、世界ジオパーク(大地の公園)に認定されました。中海と宍道
湖は、国際的に重要な湿地としてフムサール条約に登録されています。大田市
の三瓶小豆原埋没林は、縄文時代からの太古の森です。

国連で「平和の文化」の創造に尽力されてきたチョウドリ元事務次長(バン
グラデシユ出身)は、島根での心通う友との交流を宝の思い出としています。
氏は「私たちの惑星のために共に貢献を」と、一貫して呼びかけてきました。

まさしく島根には、この心が深く脈打っています。県では「しまね地球温暖化
防止活動大貫」を実施して、先進的な実績のあった家庭、事業者、学校を表彰
してきました。松江市では、多くの市民が力を合わせて環境フェスティバルを
行い、楽しく学べる広場を能っています。

国際保護鳥であるトキの飼育・繁殖を進めてきたのは、環境先進都市の誇り
高さ出雲市です。山陰中央新報礼においても、「地域との共動」を標榜し、
模範の貢献を示されてきました。

私の妻が知る津和野町の母は、地域の婦人会のリーダーとして、エコバッグ
の普及や資源ゴミ回収の改善など努力を重ねています。東京から夫の郷里に
越してきて、環境問題に取り組んできたことは、ご近所の仲間と連帯を深め、
幸光る「ふるさと」をつくる挑戦でもあったようです。

仏典の警えに「人のために光を灯せば、自分の前も明るくなる」とあります。
光は惜しみなく皆を照らします。一隅であっても、人のため、環境のために
尽くした献身の光は、わが生命を輝かせ、希望の前途を明るく開いてくれます。

島根県では、県外の人が豊かな自然と人情の中で、農林水産業や伝統工芸、
介護などを体験する研修も行われていると伺いました。体験は力です。
「わたしと地球の環境展」では、自ら自転車をこいだエネルギーで発電する
コーナー等が人気を呼んでいます。

日本一の清流と謳われる高津川の水源古賀町で、コウヤマキの自生林を長年
、守り抜いてきた私の友人がいます。父をはじめ先人が険しい山道を踏み固め
て保全した宝の木々を、断じて未来の世代へ伝え託すと心に決め、たゆまず山
に登り続けてきました。

尊き郷土愛に育まれた吉賀町のコウヤマキ―美しい狭円錐形(きょうえんすい
けい)をしたその樹形(じゅけい)がデザインの源となり、世界一の東京スカ
イツリーとして聳(そび)え立ったことは、じつに爽快な晴れ姿です。

「目に見えるものでも、見えないものでも、遠くに住むものでも、近くに住
むものでも、すでに生まれたものでも、これから生まれようと欲するものでも
、一切の生きとし生けるものは、幸せであれ」これは「慈しみ」と題された
釈尊の言葉であり、島根が生んだ大学者・中村元博士による名訳です。

「慈しみ」の心の光は、あらゆる生命、未来の生命にまで注がれていきます。
ここにこそ、「持続可能な地球社会」を創造する光源かおるといえましょう。
30年前、私は鳥取、島根を訪れ、山陰に満つる光に感嘆を込め、「山光(さ
んこう)」という愛称を提案しました。

世界の憧れ山光、そして共生の理想郷シマネから、喜びあふれる希望の大光
がいやまして輝きわたることを、私は深く念願します。

《略歴》

1928(昭和3)年生まれ。東京都出身。

創価学園、創価大学、創価女子短期大学、アメリカ創価大学、民主音楽協会
、東京富士美術館などを創立。

国連平和賞受賞。モスクワ大学、北京大学、グラスゴー大学、デンバー大学
をはじめ、世界各地の大学からの名誉学術称号は340を超える。

著書に、小説『人間革命』全19一巻)、『新・人間革命』(現25巻)、『
21世紀への対話』(歴史学者トインビーとの対談)など。