2016年12月9日 投稿者:まなこ 投稿日:2016年12月 9日(金)08時49分42秒 通報 【池田】 深層意識とはいかなるものかについて、博士はじつにわかりやすく説明されました。 ところで、この領域に自然科学のメスを入れたのは、フロイトをはじめとする深層心理学者たちでした。私は十九世紀後半に西洋で起こった無意識界への探究を高く評価します。しかし古代インドでは、すでに無著(むじゃく)、天親(てんじん)らの仏教学者が論じた唯識論において、意識の世界を越えて深く精神の内奥が見つめられていたことが知られています。 【トインビー】 おっしゃる通り、人間精神における意識下の深層の発見、探究が西洋で始まったのはそんなに古いことではなく、フロイトの世代が初めてですが、インドにおいては仏陀や彼と同時代のヒンズー教徒たちの世代にすでに先鞭がつけられていました。これはフロイトに先立つこと、少なくとも二千四百年も前のことです。 潜在意識を探究し征服しようとする近代西洋の試みは、まだ単純未熟な初期の段階を出ていません。ヒンズー教徒や仏教とは、この探求をはるかに長期にわたって続けてきており、その進歩の度合いも西洋をはるかに上回っています。西洋人は、この分野ではインド人や東アジア人の経験から学ばねばならないことがたくさんあります。 私はこれまでに出版した著書や論文を通じて、再三再四、この歴史的事実に西洋の読者の眼を向けさせようとしてきました。これは現代西洋人の滑稽なまでに誤った信念――現代西欧文明が他の文明をことごとく追い抜いて頂点に立ったという信念――を揺るがし、振り捨てさせる一助になりたいという、私の生涯にわたる努力の一環なのです。 Tweet