2016年12月3日 投稿者:まなこ 投稿日:2016年12月 3日(土)08時11分14秒 通報 ◆ 3 精神と肉体の関係 【池田】 古来、多くの哲学者や思想家が“精神”と“肉体”の関係について、さまざまな考察を重ねてきました。そして多くの学説が出されてきましたが、大別すれば唯物論の考え方と唯心論のそれになると思います。 私は、唯物論や唯心論を説く人々の生命に対する考察が文化の発展に貢献してきた点は、正当に評価されるべきだと考えます。たとえば唯心論は、人間としての道徳心や愛を説き、人間社会を人間らしく保つために多大な貢献をしてきました。また唯物論は、近代科学の成立と発展の基盤としての役割を果たしてきています。 しかしながら、唯物論者が、精神の機能を認めながらも物質としての肉体を本源的実在と考え、ともすれば生命そのものを物質視する傾向があることを考えると、唯物論に全面的に賛成するわけにはいきません。また、唯心論者が人間の理性や悟性、欲望等を重視している点は理解できますが、だからといって肉体的側面を軽視し、肉体につながる欲望等を蔑視してきたことは正しくないと思います。同じように、生気論者による、生命独自の秩序を生物体に認めながらも、その秩序を保つ根源として生命を超越した実在を求める思考法にも、抵抗を感じざるをえません。 私は唯物論、唯心論はいずれも一面のみを追求しているにすぎず、精神と肉体の関係を総体的に把握するものではないと考えています。 【トインビー】 唯物論も唯心論も、そのいずれか一方だけでは実在に対する満足すべき説明とはならないとの御意見に、私も賛成です。物質は精神論では理解しきれませんし、精神を物質論で理解することもできません。両者をともに包含する単一体としてみるとき 初めてそれぞれを理解することができるわけです。ところが、この精神身体相関の統一体における二つの側面は、知的に理解可能な単一個体へと還元できるものではありませんから、われわれはこの両者が不可分であることをなかなか理解できないのです。 Tweet