投稿者:河内平野 投稿日:2014年 9月 6日(土)18時35分33秒 返信・引用 編集済

彼は、自分の正しさを確信していた。
「残酷な迫害は、つねに私の最高の栄誉の勲章である。迫害は、私から国民としての権利を奪い、祖国を奪った。私は見知らぬ土地に放りだされた。暴力と復讐が私から奪い取れなかったもの――今や、それのみを私は持つ。それは、純粋な良心の証、長く祖国に仕えた記憶、そして真の自由への愛である」

「私を攻撃する手が、高く上げられているなら、汚名は私にではなく、手を上げたほうにある」
「私は、財産と、生命をも失うかもしれない。しかし、誇りは絶対に失わない」
「いつの日か、道理と正義が、私の正しさを証明する日が来るだろう!その『希望』のほうが、今、権力者にへつらって得られる地位や敬意よりも価値がある」

やがて、彼の「希望」は実った。およそ四年にわたる追放のあと、ボリバル亡きあとに成立したコロンビア共和国(当時はヌエバ・グラナダ共和国)の初代大統領として迎えられたのである。(一八三二年。三七年まで大統領)

ボリバルは死の一ヶ月前、将軍との対立を後悔した手紙をある人に書いている。
「サンタンデルとの仲をとりなさなかったことが、われわれを堕落させた」と。

サンタンデル将軍は「自由と規律」の人であった。
それは「法に従う」ことの両面を意味した。
「法に従う」という《要》があるゆえに「自由」があり、「規律」があった。
彼は、「自由なき独裁」にも「規律なき無政府状態」にも反対した。
「武器が汝らに独立をもたらしたなら、法が汝らに自由を与えるだろう」
「市民が畏敬すべきものは公の役職を持つ者(=高位の人)ではなく、『法』のみである」
「すべての人に平等の権利を!『厳格なまでに平等』の権利を!」
「われわれは、いかなるものの奴隷にもなるべきではない。ただ『法』だけの奴隷となるべきだ。そして、『自由への競争』を開始するのだ。『理性』と『権利』を存分に使う決心で――」
「団結と『法』への忠順は生をもたらし、争いは死をもたらす」

まさに、社会の混乱は、正しき「法」に従わず、「人」に従わせようとする傲慢から生まれる。
「法」をゆがめ、無視し、逸脱し、みずからのエゴをとおそうとする「人」の放縦、横暴――。
それは「権力」の魔性そのものの姿である。歴史上、つねに見られた悲劇である。

これらの将軍の言葉には、いわば「われ、『権力』には従わぬ、ただ『法』のみに従う」との信条が貫かれている。

中心に置くべきは、あくまでも「法」である。無法の「権力」を恐れ、羊のように従うことは、人間として「敗者」となる。
どこまでも私利私欲を捨てて、正しき「法」に従い、「法」を守り、「権力」と戦う人こそ偉大であり、勝利者となろう。