投稿者:河内平野   投稿日:2015年 3月20日(金)14時49分33秒     通報
先日、フランスの青年部から、「『3・16』の決意を込めて」とのことで、一冊の本が届けられた。
文豪ゾラの文章である。謹んで、御宝前に供えさせていただいた。

ゾラについては、これまで何回も、お話ししてきた。
しかし、そこに収められた青年への烈々たる呼びかけを、重ねて皆さんに贈りたく、紹介させていただきたい。

ゾラは、ユゴーとならび称される、フランスの大文豪。
自然主義文学を代表する作家で、『居酒屋』『ナナ』『大地』などの作品は日本でも有名である。

彼は、″下層階級の赤裸々な生活を描くとき、真骨頂を発揮する″と言われる。

彼の人生は、「庶民の側に立って」戦う人生であった。
これを覚えてもらいたい。大事なのは庶民である。

日蓮大聖人も庶民であられた。「民が子」であると胸を張っておられた。
当時の高僧は、ほとんど、貴族出身など高い身分であった。
しかし、大聖人は、あえて、家柄もなく、地位もなく、財産もない、最低の階層にお生まれになった。

ここに重大な意義がある。

地位などで自分を飾ることは、インチキの生き方である。
偉ぶって、庶民を差別する人間のどこが偉いのか。

真の仏法者は、虚飾をはぎ取った″人間としての偉さ″を追求する。

ゾラの人生は、決して順風満帆ではなかった。
七歳で父を亡くし、大学入試にも失敗。
進学を断念して、出版社に勤めながら、文筆活動を志した。

与えられた仕事は、書籍の梱包作業などの雑用ばかり。
しかし、その仕事に懸命に取り組みながら、小新聞に投稿を重ねていた。
地道な文筆活動を続け、遂には″十九世紀最大のベストセラー作家″と称されるまでになった。

ゾラが晩年に遭遇したのが、ドレフュス事件という、有名な″冤罪事件″である。
何の罪もない人間が、軍部権力によってスパイ容疑をかけられ、遠島に流刑にされていた。
事件の背景には、国民の″反ユダヤ感情″を悪用した策謀があった。

ゾラは、黙っていることができなかった。
齢六十近くになっていたが、彼は正義のために、敢然と立ち上がった。
高齢にもかかわらず、「正義のために叫ぼう」と。

叫べなくなってしまえば、人間、おしまいである。その人は、″心″が死んでいる。