投稿者:河内平野  投稿日:2014年12月 6日(土)15時48分54秒    通報
イギリス、フランス、ドイツ。いずれの国もすばらしい広布発展の足跡を刻んでいた。

とくに青年部は、社会部にも、また確固たる人格のうえでも、
一騎当千の人材が数多く育っており、頼もしいかぎりであった。
公園の横では、《朝市》が開かれ、手作りの工芸品などを売る店が並んでいた。

私はそこで一枚の絵画を求めた。
スペインの巨匠ゴヤの有名な「一八〇八年五月三日」の複製である。
なお、スペインの男子部の皆さんからも、以前、同じ絵の複製を贈っていただいたことがある。

ゴヤのこの絵は、実際に行われたフランス軍によるスペイン農民の銃殺の場面を描いている。

一八〇八年、ナポレオンのイベリア半島侵略に対してスペイン国民が立ち上がり、「半島戦争」が勃発した。
ゴヤの「五月三日」は、前日の二日に起きた民衆の決起に対するフランス軍の弾圧の模様を題材としている。

ナポレオンの命令によりフランス軍は、
決起に関係したと思われるスペイン人を、裁判にもかけず死刑に処した。

刑を執行する兵士たち。
命令に従ううちに殺人が手柄のようになり、農民たちを次々と冷酷に射殺していく。

この時、マドリードの市民はフランス軍兵士への怒りに燃えて、ゲリラ戦を展開していた。
スペイン語で「小規模な戦闘」を意味する「ゲリラ」という言葉も、この戦いから有名になった。

「どうすれば横暴な権力を倒し、祖国を守れるか」――。
民衆が苦しみのなかから生みだした戦術であった。

そして一八一三年、ついにナポレオン軍はスペインからの撤退を余儀なくされたのである。

傲慢な権力の敗北であった。
民衆の「勇気」と「団結」の勝利であった。
「信念」で勝ち取った栄光であった。

その史実は、祖国の平和と広宣のために戦う、スペインはじめ各国の同志の姿と二重写しになって、私の心に鮮烈に燃えついている。

「小規模な戦い」とは、学会の実践でいえば「ミニ懇談」など、
形式にとらわれない自在な価値創造の行動にあたるであろうか。

少人数で、自由闊達に「人生」と「信仰を」語り合っていく。
一人一人が知恵を発揮し、いわば自分の口を広布への《武器》にしながら、納得と共感の輪を広げていく――。

農民たちの貧しい身なり。死に直面しての緊迫した表情。
ゴヤは「一八〇八年五月三日」の悲劇を描くことによって、権力・暴力の残酷な歴史を後世にとどめた。

権力への燃えるがごとき、「怒り」、正義のために戦う「誇り」、
死をも恐れぬ「信念」と「勇気」――こうした民衆の無言の叫びを、彼は感じ取ったにちがいない。

それはまさに「学会精神」「青年部魂」そのものである。

一身をなげうって戦う先駆者なくして、庶民の幸福を守ることはできない。
「世界広宣流布」の偉業を完遂することはできない。

そこで私は、青年部結成四十周年を記念し、万感の期待をこめて、この絵を青年部の皆さんに贈りたい。

【結成四十周年記念青年部総会 平成三年七月十四日(全集七十七巻)】