2017年2月17日 投稿者:寝たきりオジサン 投稿日:2017年 2月17日(金)01時05分33秒 通報 【第10回】ケニア作家協会インダンガシ会長2006-9-20 「良き教師」の条件は「良き人間」 ──“わが子の如く”愛情を注げ 世界に開かれた、わが創価大学には、これまで14力国217人の交換教員の方 々が来学されている。交換教員の皆さまは、その国の未来を担う「英知の宝」で ある。この方々を大事にすることは、その国の未来を大事にすることである。こ の方々と友情を結ぶことは、その国との未来の友情を育てることである。友情の スクラムは、崩れることなき平和の土台となる。この信念のもと、私は創立者と して、最大の尊敬と誠実の心をもって、皆さまをお迎えしてきた。どの方も、豊 かな知識と経験をもって、大いに学生や教職員を啓発してくださった。 インダンガシ会長も、その一人である。ナイロビ大学教授として、2000年に 来日。半年という短い赴任期間であったが、輝かしい歴史を残されている。「教 師としての献身的な姿から“学生第一”の姿勢を学びました」多くの教職員から、 こうした共感の声を聞いた。会長の講義には、「教えてやろう」などという偉ぶ った素振りは微塵もなかったという。「常に学生の表情を見ながら語りかけてく れたので、一方的な講義というより対話をしながら講義が進んでいるような感じ でした」ある学生の感想である。 「学生と一緒に学んでいこう!」との謙虚な姿勢を貫かれていたのだ。キャンパ スですれ違って、あいさつすると、いつも、にこやかに応えてくれた。離日する 際も、「記念に」と、たくさんの心尽くしの品をプレゼントしてくれ、かえって 学生たちが恐縮したそうだ。 ◆美しき教育の連帯 日本滞在中、私は会長に「良き教育者」の条件を伺った。会長は即答された。「 『良き教師』になるには、『良き人間』でなければなりません」その通りである 。誠実で、思いやりに富んでいて、いつも親身になって接してくれる──こうし た人間性豊かな人物こそ、「良き教育者」になれるのだ。「インダンガシ先生は、 まるで、お母さんやおばあちゃんが、自分の子や孫に語りかけるように、教えて くれました」講義に参加して感動したこの学生は、自ら教師になる決意を固め、 後にその夢を実現したという。 「わが子の如く」愛情を注いだ分、学生は教師を慕い、成長していく。会長は、 この人間教育の勝利の法則を厳然と証明されたのである。次代を担う青少年へ の愛情は、父母や教師だけが抱くべきものではなかろう。会長から、こんなエ ピソードを伺ったことがある。会長の家は生活が苦しく、高校の学費を払う余 裕がなかった。見かねた一族の人々が、経済的に余裕のある会長の叔父さんに、 学費を肩代わりしてくれるよう頼んでくれた。 「いいかね、この子はあなたの甥だよ。姓も同じだよ。この子は国家試験に合格 し、いい高等学校に入るように選ばれたのだよ」それを聞いて、叔父さんは、快 く引き受けてくれた。麗(うるわ)しい一族の絆に、私は感動した。もちろん、 大家族主義が根づいたアフリカならではの話である。だが、「未来の宝である子 どもたちを、みんなで協力して育てていこう」。この美しき教育の連帯の心を、 社会全体が共有すれば、子どもたちの可能性は、ますます開けゆくにちがいない。 家庭、学校、地域が一体となって「わが子の如く」愛情を注げば、その土地の未 来は必ず輝いていく。私が創価学会に未来部をつくった大きな意義も、ここにあ る。「創価学会の中には、.アフリカと同じ、家族的な一体感がある」会長は日 本滞在中、一つの出会いを通して、それを実感したという。ある日、会長は創価 大学の校門近くの停留所で、バスを待っていた。すると、一人の婦人が4人の娘 さんを連れてやってきた。 ◆SGIは人間家族 バスを待つ間、しばし語らいの花が咲く。お母さんの日本語を、長女が英語に翻 訳。残りの3人の娘さんも、通訳を手伝った。話の内容から会長は、その家族が 創価学会のメンバーであることを知った。自分がケニアから来た創価大学の交換 教員であることを告げると、一家は大喜び。「頑張ってください」と何度も励ま された。「出会いの記念に」と、帽子までプレゼントされた。会長は、何だか自 分も、この家族の一員になったような気がして、とても心が温かくなった──。 「地球一体化」が叫ばれる今日、経済や科学技術、情報や通信の分野の発展は著 しい。だが、何より必要なのは、人類の「心」の一体化であろう。私は、戸田先 生の唱えた「地球民族主義」を思い出す。国家や民族、イデオロギーなどの差異 を超えて、人類は「ひとつの民族」であり、「家族」である!この共同体意識が あって、初めて平和の文明は花咲く。恩師の信条を受け継ぎ、私が創立したSG I(創価学会インタナショナル)──それは、地球一体化時代の先駆けなのだ。 2000年5月のこと。ナイジェリアの北部19州の代表団一行が創価大学を訪 れた。記念講堂での歓迎式典。私はそのスピーチを、ナイジェリアに関するクイ ズで始めた。「ナイジェリアの人口は?」「代表的な川は?」「世界に誇るスポ ーツは?」──等々。ナイジェリアといっても、日本人には、なじみが薄いので はないか。何とか身近に感じられるようにしたい。そう願って素朴な質問を即興 で投げかけてみたのである。幸い、私の心配は杞憂(きゆう)に終わった。会場 からは多くの手が挙がり、次々と正解が返ってきた。 スピーチでは、ナイジェリアの諺(ことわざ)も幾つか紹介した。諺は、その国 の文化を映す鏡だ。人々が古(いにしえ)から育(はぐく)んできた、生活の知 恵や人生の真理、ウイットに富んだ警句などが、簡潔に表現されている。何より、 わかりやすい。その国を知るには、絶好の材料である。インダンガシ会長も、こ の式典に出席されていた。後日、伺ったところ、私のスピーチを聞いて、祖国の 「口承(こうしょう)文学」を想起されたという。口承文学は、アフリカの偉大 な文学の伝統である。 民族の歴史や文化、そして先人の英知などを、世代から世代へ、口づてに語り継 いでいく。そこには、やはり、わかりやすい諺や「なぞなぞ」が、数多く見られ る。 ◆皆に、わかりやすく 「わかりやすい」ということは、決して内容が薄いということではない。かつて 会長も言われた。「『親しみやすさ』『受け入れやすさ』というのは、『高尚さ を欠く』ことと同義ではありません」むしろ、反対である。より本源的であり、 根本的ということである。一見、単純な中に、より多くの内容が凝縮され、充実 しているのだ。釈尊も難解な仏法哲理を、巧みな譬喩(ひゆ)を用いて法を説い た。日蓮大聖人も、ひらがなを交じえて御書を認(したた)められた。どうすれ ば民衆にわかりやすく教えを伝えられるか。この一点に心を砕かれたのである。 どんなに素晴らしい教えであっても、難しい言葉で語られては、伝わるべきこと も伝わらない。それでは自己満足である。傲慢である。無慈悲である。聴いても らう人に無礼である。 誰にでも「わかりやすく」!これが仏法の根本精神である。創価学会も、この精 神を受け継ぎ、現代の人々に、大聖人の仏法を「よりわかりやすく」「より平明 に」説こうと努力を重ねてきた。人々の胸に入っていくよう工夫する──ここに、 慈悲の発露があり、智慧の結晶がある。温かい人間性の光があるのだ。 【注】ヘンリー・インダンガシ(1947年~) ケニア作家協会会長。ケニア口承文学協会会長。ナイロビ大学文学部教授。ケニ ア生まれ。同国で最も優秀な高校の一つフレンズ・カムシガー高校を経て、ナイ ロビ大学文学コースへ進学。同大学を首席で卒業後、米カリフォルニア大学サン タクルーズ校で文学修士・博士号を取得。その後、1983年からナイロビ大学 文学部学科長を5期にわたり務めた。2000年4月から、交換教員として創価 大学に赴任。同年7月には池田SGI会長と「アフリカ文学の魅力」などをめぐ り語らい、対談集『世界の文学を語る』(潮出版社)に収録された。2001年、 研究書『池田大作とアフリカ──ケニア作家たちの一考察』を発刊。ナイロビ大 学で、SGI会長の著作を学ぶ特別授業も担当している。 Tweet