投稿者:ヨッシー 投稿日:2017年 1月14日(土)12時20分18秒   通報
其の二十六

法務庵にて

頼綱「隠密の助兵衛からの報告によればじゃ、前大老の嫌師の守さまが旧臣たちを集めて、どうもオヌシの事を非難しているようじゃが」

勃樹「なんと、あの狸ジジイめ。幕府中枢とのつながりが強いことをかさに着て、今だに威張りくさって。さっさと往生しろ!」

頼綱「おいおい、ワシの法務庵で、さようなことを口走るな。ワシまで敵視されてしまうではないか」

勃樹「しかし、、、どうにかなりませぬか、あの狸、、、」

頼綱「そう焦るな、いくら幕府とのつながりが強いとはいえ、それは大老時代のこと。今や美濃金津園守佐藤泡浩がしっかりと食い込んでおるから前大老に頼る必要もない。それどころか安倍幕府との関係は、今の方がより強固になっておる。であるから、前大老をつまはじきにするのは、左程難しいことではない」

勃樹「でしたら早々にも、、、」

頼綱「おぬしも若いのう。知っての通り、前大老は相当の狸じゃ、矢野明電とのこともある、今は生かさず殺さずが得策というもの」

勃樹「なるほど、、、、つまり狐と狸の化かし合いですな」

頼綱「まあな。それよりだ、その佐藤が重要なことを申してきておる。藩の安泰を望むなら、幕府との関係を更に強く密にすべきじゃと。そのためには多少の悪政にも目をつぶれ、否、できれば積極的に加担してより蜜月になれと。機会を見て、安倍将軍とご城代とを会わせたいとも」

勃樹「よいではありませぬか、どんどんやりましょう。今更きれいごとなど必要ありゃしませぬ」

頼綱「うむ。そこでじゃ、今後は、殿の方針とは大きく外れるが、積極的に幕府の意向に沿う藩政を敷いていくゆえ、そのことが藩民にばれて騒動にならぬよう、うまく立ち回ってもらいたい」

勃樹「簡単でござる。もし批判の声が出れば、『それは、殿の古いお教え、今は変わられたのだ』と言い切ってやりましょう。また、それでも四の五の言う輩には、『殿のご意向に反する者、手打ちにしてくれる!』と徹底的に脅してやりましょうぞ」

頼綱「よし、それでよい。早速、永田町下屋敷の金津園泡浩に伝えよう。オヌシは、今のことをまず城中の役臣たちに徹底せよ。藩を守るための重要な施策であると」

勃樹「承知仕った!」

頼綱「助兵衛!聞いたな、すぐ永田町へ飛べ!」

キャイーン

(つづく)
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