投稿者:ヨッシー 投稿日:2017年 1月12日(木)12時00分26秒   通報
其の二十四

誠治「大目付さま、話が違うではござらんか! 新藩律が発表されたというのに、、、」

頼綱「まあ、そう声を荒げるな。ご城代や前大老が、そこまでは慌てるなと申されておるのじゃ」

誠治「これまでいくら使ったと思ってござる。本城祈願の間のご本尊を独自のものに変えたいと仰せられたからこそ動いて来たのでござる」

頼綱「わかっておる。だが今回は、藩律の改定で精一杯じゃ。これで先ずは暫く様子を見ようというのが、城代方の方針なのじゃ」

誠治「・・・・」

頼綱「だいたい、オヌシやホーテンの事を前大老がよく思っておらんらしい」

誠治「何を申されますか! 今や蜜月となった幕府とも、最初に気脈を通じさせたのは、拙者たちではござらんか!」

頼綱「だが、『天鼓』の事もあるしのう、、、」

誠治「なにを今更! あれは、頼綱さまもご承知の上、勃樹どの傀儡政権を作るため、我ら三位一体で仕掛けたものでござろう!」

頼綱「まあまあ、そこまで申すな。以前、その方等の作った荒唐無稽、いや高等無比な書き物『最蓮房は日興上人だった』等を高額で買い上げるよう進言したのもワシじゃ。その上、そちの倅を若衆頭にまで取り立てたのじゃ、そのことも思慮に入れて、今しばらく待ってくれんか」

誠治「それは、お互い様でございましょう。いいですか頼綱さま、藩民から集めた年貢を藩命と称して我らが裏工作のために回していただき、その裏工作で得た金をまた頼綱さまや勃樹どのに戻す、これが、我ら三位一体の目指す“循環社会”戦略でござろう」

頼綱「・・・・」

誠治「拙者や芳典とて、カラクリ地獄耳の広野登諜(ひろの・とうちょう)をはじめとする、多くの忍び衆を食わせねばなりませんのじゃ。しかも、頼みの芳典が香港の鼠楽園のグッズ販売に手を出して失敗し、何万両という借財を負った上に、交通事故に遭い、文字通り首が回らなくなったのもご存じであろう」

頼綱「わかった、わかった。明年あたりにはなんとかする。それまでちと待て!」

誠治「何卒、くれぐれもよろしくお願いいたしまするぞ。でわ」

頼綱(せっかくうまく運んでおるのに、ああ急かされては元も子もない。あ奴等ともいずれ手を切らんとならんのう、、、)

(つづく)
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