投稿者:まなこ 投稿日:2017年 1月 7日(土)08時23分25秒   通報
【池田】 たしかに中国人をはじめとして、一般に東洋人は、そうした困難な環境に順応する能力が優れているのかもしれません。しかし、狭い家屋に住むことが苦痛であるのは、洋の東西を問わず、どの民族にとっても同じことです。
ところで、これもまた世界的な傾向かもしれませんが、日本では、最近、土地が投機の対象となって、地主やブローカーが地価の高騰に便乗して大儲けをするという傾向が強まっています。毎年の長者番付では、これらのいわゆる土地成金が上位を占めるという、不健全な状況さえみられます。こうした現状に対しては、何らかの手を打つ必要がありますね。

【トインビー】イギリスでも、投機的な土建業者たちが、ほとんどスキャンダルともいえるほどの大儲けをしています。この連中は、建物や土地の資産価値が急騰するのを見越し、そこからくる巨額の利ざやを懐にしようとして、建物を何年間もカラにしておくのです。
土地は人間の生活に不可欠のものであり、しかも限られた面積しか利用できないのですから、土地を投機の対象として私腹を肥やそうなどというのは、きわめて間違ったことです。土地は、ほかの生活必需物、たとえば水とか鉱物などのように、私利私欲を貪る個人の手にゆだねるべきではありません。

【池田】 おっしゃる通りです。土地は、一部の金持ちや、投機をねらうブローカーの独占物にさせては断じてなりません。そこで、一般庶民が土地を生活必需物として使用できるようにするには、まず地価を抑制することが必要です。ところが、地下の高騰をめぐる問題は、すべて需要が多すぎるところからきているわけで、これだけの需要がある以上、自由経済のもとでは地価の高騰はますます避けられなくなるでしょう。これを防ぐためには、私は、土地をしだいに公有化していく方向をとる以外にないと考えます。

【トインビー】 公共の利益を図って地価を抑制すべきである、とのお考えに私も同感です。土地は乏しい必需物であり、しかも、他のあらゆる物資が土地の有無によって左右されます。人間の営みにしても、すべてその通りです。したがって、私も、土地・建物はすべて公有化すべきだと考えます。
その場合、現に所有者自身が住んでいる家屋については、かなり割りの良い補償額で、またオフィスビルや工場などに対しては、比較的低廉な補償額でこれを買い上げるべきでしょう。投機家たちが押えている土地や建物は没収すべきです。また仮に投機家たちに補償金を支払うにしても、それは彼らが投機という反社会的行為に費やした金額より、はるかに低額のものにすべきです。