投稿者:ヨッシー 投稿日:2016年12月10日(土)09時42分58秒   通報
其の二十二

家臣A「おい、例の新藩律見たか?」

家臣B「見た見た。やばくねー?」

家臣A「オヌシもそう思うか。あれじゃ、これまでの殿のご発言やお考えがウソだったってことになるぜ」

家臣B「そんなはずはあるまい。なにかがおかしいのう」

家臣A「だいたい、あの“認定”ってのが、よくわからねえ。今までそんなことあったか?」

家臣B「そうそう、新藩律じゃ“ご戒壇さま”を認定外と宣言されたのに、朝晩のお勤め教本は、そのまんま。いったいどっちを信じりゃええんじゃ?」

家臣C「それについちゃ、さっそく“宿坊”に出てるぜ」

家臣D「“藩律珍問答”だろ、読んだぜ。一々うなずいちまったよ」

家臣C「こいつは内緒だが、お側用人のお一人が『あの新藩律は、ご城代を中心とする老中たちが決めた事で、殿のご意思とは全く関係ござらん』と仰せになったと聞いたぞ」

家臣B「おおやまー、そんなことを。ありそうな話じゃのう、、、、」

家臣C「しかもなんだ、あの人事は? いつの間にか、遠藤どのの首を森中小判鮫に変えているではないか」

家臣D「遠藤法華の守は、律令方ばかりでなく、こ師範会議からも外されたそうじゃ」

家臣C「年明けには、城中からも追い出されるとのもっぱらの噂だ」

家臣A「まことか? てことは、やっぱりあの“律令方報告”は怪文書ではなかった、書かれていたことは事実だったってことじゃねえか」

家臣E「おぬしら、滅多なことを言うもんじゃねえ。ともかくご城代の方針に少しでもイチャモンを付けようもんなら、即刻首が飛ぶとの噂じゃ」

家臣B「なんか嫌な空気になってきたのう」

家臣C「我らも気をつけようぞ。最近では、あちこちに大目付さま配下の目が光っているとのことだ」

家臣B「あっちもこっちもか?」

家臣A「そういやーこの所、城中にやたら野良犬が増えたようだが、気のせいかのう」

(ワン、ワン、ワォーン)

家臣C「ほれ、また。もう、あっちもこっちもじゃ!」

家臣D「くわばら、クワバラ・・・」

不穏な空気が漂う中、嵐の予感と共に、新藩律制定の年は暮れていったのである。

(弐の巻 おわり)

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