投稿者:ヨッシー 投稿日:2016年12月 9日(金)11時44分26秒   通報
其の二十一

頼綱「新藩律、ついにやりましたな」

城代「うむ。して藩民の反応の方はどうじゃ?」

頼綱「一部の跳ねっ返り以外は、静かなものでございます。正教瓦版の四面にコッソリ発表したのが功を奏したものと」

城代「藩民など何も考えてはおらぬわ。しかも皆、殿がご健在であると信じ込んでおるから尚更じゃ」

頼綱「確かに。しかも煙に巻いたような内容でござるから、誰もよく分からんというのが実態であろうかと」

城代「それでよいのじゃ。ワシでさえよく分からんのじゃからな。はっはっは。兎も角も、独自性さえ明確になれば、後は何にも縛られる事なく、自由勝手に決める事が出来る。これが独自性を強調した目的じゃ」

頼綱「なるほど。これで大石藩がなんと言おうと 関係ないばかりか、これまでの藩律や方針も、全て大石藩に気兼ねしたものだった事にして、一遍に葬り去ることができますな」

城代「そうよ、そうなれば、過去との整合性など気にする必要もない。先代や当代の方針さえ過去のものとして退けることが可能になったという話よ」

頼綱「しかも、その殿も、今や風前の灯火。後はご城代の思いのままですな」

城代「まあな。その為にこそ今、殿の存命の内に、殿のご意向とう名目で都合の良い藩律を作っておくことが重要なのじゃ」

頼綱「なるほど、感服仕りました。ただ、、、、」

城代「いかがした?」

頼綱「一つだけ気になる事が、、、」

城代「なんじゃ?」

頼綱「お側用人の次長で、新五猫将軍の一人・中野擁丹(なかの・ようたん)が、『こたびの発表内容は、殿への事前報告文書と違う』などと不平を漏らしておるとか」

城代「気にするな。どうせ殿は、報告文書など読める状態ではない。あんなもの形式に過ぎんわ。発表した者勝ちよ」

頼綱「恐れ入りましてございます」 (城代も大分肝が座ってきたわい。腹の底に隠していた殿に対する生理的嫌悪感が露骨に表に出てきたようだ)

城代「どうした?」

頼綱「あ、いや、なんでもござらん」

城代「それよりも、不満分子の取り締まりを更に強化徹底するのじゃ。北朝の国や旧露の国の如く密告を奨励して、一人残らず殲滅するのじゃ」

頼綱「はっ、承知仕りました。聞いたか? 助兵衛!」

「ワォ~ン」

(つづく)

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