投稿者:ヨッシー 投稿日:2016年12月 1日(木)12時47分12秒   通報
弐の巻(平成二十六甲午ノ年)

其の十三

勃樹「頼綱どの、大変なことになり申した」

頼綱「さように慌てていかがいたした」

勃樹「昨年来、律令方へ申し付けていた藩律改正の裏事情の詳細が、覚書となって藩内に流出しております」

頼綱「なんじゃと!」

勃樹「なにやら『律令方報告』とか称されて、当時のやり取り、ご城代や前大老、頼綱どのや拙者の発言が事細かに告発されているとのこと」

頼綱「まっ、まずいではないか!」

勃樹「はい。拙者の、『藩律なんぞ都合よくつくればよいのじゃ』とか、頼綱どのの『一割くらい従えない者が出てもかまわん』などの発言まで記され、更には、我らの改革方針をご制止になった殿のお言葉までが克明に、、、、、」

頼綱「なんと! まずいのう、、、、」

勃樹「いかがいたしましょうぞ?」

頼綱「広く出回る前に、即刻その書面が出所不明の偽文書であると藩内に触れ回るのじゃ! 同時にそれを記した者を探し出すのじゃ!」

勃樹「かしこまりましてございます」

頼綱「それとじゃ、ご城代に報告し、前大老にも伝えて我ら四人で緊急対策詮議をせねばならぬ」

勃樹「では、早々に対処いたします」

城中奥座敷

城代「『律令方報告』なる文書、いったいどこまで出まわっておる」

頼綱「どうも我らに不満を持つ者共の手から手へと伝わっているようでござる。先ほどこれを作成したとおぼしき律令方の一人を突き止めました。いかが処分いたしましょうぞ」

城代「そうさな、いきなり城外追放などすれば、かえって開き直って騒ぐやも知れん。それより先ずは閑職に追いやり録を下げて、『これ以上余計なことを申せば録を召し上げ城外追放する』と脅した方が得策じゃ。そ奴も妻子があるじゃろうから怯えて黙るじゃろう。ほとぼりが冷めたころを見計らって追放すればよい」

頼綱「なるほど、では左様に」

城代「うむ。今後異議を唱うる者も同様の処置をせい。さすれば皆口をつぐんで静かになるばずじゃ」

頼綱「心得ましてございます」

栄助「城中ばかりでは片手落ちじゃ。ご城下においても不満分子とおぼしき連中が、我らを四人組などと称して騒いでおると聞く」

城代「しかり。城内は元より、城下もまた徹底的に取り締まらねばならぬ。何か対策はあるか」

頼綱「急遽、取締り隠密同心に、“新鮮組”ならぬ“汚染組”を仕立てまして、その局長に、拙者のところで密かに養っております弓谷助兵衛を当てるつもりでございます」

城代「弓谷とは、かつて複数の女官に手を出して殿の大逆鱗に触れた、あの弓谷か?」

勃樹「ヘヘッ、『あっちもこっちも、もう病気です』って、クスッ」

頼綱「オヌシが言うか?」

勃起「( ̄◇ ̄;)」

頼綱「ともかく、奴は殿より“ケダモノ”呼ばわりされたことを心底恨んでおりますゆえ、殿に心酔する者をことのほか嫌ってございます。よってまさに適任かと」

城代「なるほど、で、弓谷一人で大丈夫か?」

勃樹「いえ、藩内を東城下と西城下に分け、東はこの弓谷を、西には森井なる者に担当させまする」

城代「森井とはあの着服・暴行小僧の森井か。揃いも揃って脛に傷持つ者ばかり揃えたものじゃのう」

勃樹「何を仰せられます、“脛に傷持つ者ほど使い勝手が良い”というのは前大老以来の藩政・治世の極意でござりまする」

栄助 「フッフッフ、貴殿らも漸くわかってきたようだのう」

(つづく)

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壱の巻(平成二十五癸巳ノ年)
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