本物の同志とは。
投稿者:河内平野 投稿日:2014年 9月13日(土)11時31分44秒 返信・引用

今回のソ連の政変における劇的な民衆の勝利――。
私は、いちばん近い北海道の地で見つめた。
即座に、ソ連の多くの友人と連携を取り合いつつ、私は私の立場で、今回のクーデターに対して絶対反対を貫いた。
ソ連からの連絡のなかには「ソ連の国民と《同苦》してくださった池田先生の恩情を決して忘れない」との声もあった。

ともあれ、ソ連の今回の事件をとおして、世界中が「民主の流れは逆行させられない」「民衆の力は武力、権力よりも強い」ことを、あらためて痛感している。

その偉大な「民衆の力」による社会変革のドラマを目のあたりにして、私は恩師戸田先生から若き日に学んだ《一冊の本》を想い起こした。
今から四十年前、戸田先生が会長に就任される直前の、最もたいへんな時代であった。
私をはじめ青年部の代表に読ませたのが、革命小説『永遠の都』である。

この作品は、これまで何度も紹介してきたとおり、二十世紀幕開けのころのイタリア・ローマを舞台にした、波瀾万丈のドラマである。
作者のホール・ケイン(一八五三年―一九三一年)は、イギリスの貧しい鍛冶屋に生まれ、小学校を中退して、働きながら独学で学び続けた苦労人である。

ヨーロッパやアメリカでベストセラー作家となった後も、社会主義への情熱をもち続け、下院議員を務めたほか、ロシアとポーランドにおけるユダヤ人の弾圧を糾弾するルポ(現地報告の記事)を発表している。
《正義の人》はつねに戦っている。
《民のため、正義のために戦う人》は強い。美しい。

『永遠の都』が書かれたのは一九〇一年(明治三十四年)。まさしく《二十世紀の始まり》の年であった。
日本での初の翻訳出版は一九三〇年(昭和五年)。創価学会創立の年である。

当時、戸田先生は三十歳。先生もまた、青春の真っただ中でこの書を手にされたわけである。
そしてこの物語をとおし、戸田先生が私に、また後継の青年たちに「学会精神」を教えてくださった、師弟の縁が刻まれた一書である。

『永遠の都』には主人公の革命児ロッシが、革命に参加する人々にこのように語る言葉がある。
「もし《人間共和》がいつ実を結ぶのかと聞かれたら、われわれはこう答えればよいのです。たとえば、まずあそこに一つ、ここに一つ、あるいはあそこの国、ここの国といったように、世界が《人間共和》をつくりあげるような下地が出てくれば、従来の世界を支配してきた権力は、こんどは《人間共和》によってしはいされるようになるだろう、と」

――私どもの志向する、仏法を根本とした《大民衆運動》への力強い励ましとも思える。

《政治》と《宗教》の二重の圧制に、苦しみあえぐ民衆を救わんと、立ち上がった青年革命児ロッシ。
そして彼を信じ、革命に殉じたブルーノ。

いかなる弾圧を加えられようと、いかなる策略を張りめぐらされようと、二人の「信念」と「友情」だけは絶対に壊せなかった。
偽の手紙を使い、なんとか友を裏切らせようとする権力者の巧妙な謀略にも、ブルーノは屈しない。
最後の最後まで、同志の正義を信じて、「ロッシ万歳!」と、友の名を叫んでいく――。

その不屈の信念に、時代、民族、社会状況を超えた「人間」の真髄がある。
それに比べて《裏切り者》の、なんと愚かで、なんと哀れなことか。

戸田先生は、このロッシとブルーノをとおして、「学会の同志も永遠にかくあれ!」と、《青年の魂》に深く強く楔を打ち込まれたのである。

本物の同志、本物の共戦の戦友。その《心を合わせた》戦いは、十倍もの力を引き出していく。

【第四十五回本部幹部会 平成三年八月二十四日(大作全集七十八巻)】