投稿者:赤胴鈴之助 投稿日:2017年 8月12日(土)23時04分3秒   通報
イスラム文明の真髄「多様性」 75

池田
引き続いて博士に質問したいのですが、イスラム文明の特徴とは何でしょうか。

現代でも、アメリカにおいては、ムスリムたちによる個性的な文化創造の動きがありま

すし、ヨーロッパにおいては、音楽をはじめとして、イスラム文化が多方面にエネルギッ

シュな影響を与えつつあります。私としても、イスラムの文化について興味が尽きませ

ん。

テヘラニアン
イスラム文明の真髄を一言でいうと、やはり「多様性」ですね。

イスラム文明は四つの柱・・・宗教、法学、科学、文化・・・の上に築かれました。

このうち、宗教の柱は、「宗教には無理強いということが禁もつ」
〔二・二五七〕(前掲書)という

『コーラン』の韻文にその特質が力強く表現されております。

この文が、特定の宗教を人々に強制することなく、創造的な一体性への信仰を啓発した

のです。

そして、多様さを許容するイスラム法の体系を誕生させました。

池田
イスラム法を意味する「シャリーア」という言葉は、もともと「水場へ至る道」を

意味し、さらには「救いへと至る道」という意味があるとか。

この場合、法といっても、国家における法体系というより、「人として守るべき道」と

いう広い意味で解するべきものだそうですね。

テヘラニアン
そうです。そして宗教、法学に次いで、科学がやがてイスラムの第三の柱になりました。

その依って立つ基盤が、ムハンマドの「ムスリムは男女を問わず、各人が知識を求めて

『中国にさえ』赴かなくてはならない」という言葉だったのです。

池田
イスラムと中国の交流は、ヨーロッパの大航海時代以前から存在していましたね。

テヘラニアン
ええ。中国は当時、アラブ人の地理的な想像のなかでは、おそらく最も遠隔の地で

あったと思われます。

イスラムの学者や科学者たちは、逡巡することなく、ペルシャ、エジプト、インド、

中国の科学的成果を発見し、神のすばらしき神秘として活用できたのです。

池田
少し話はそれますが、中国におけるイスラムといえば、有名な「アラジンと魔法の

ランプ」の主人公アラジンを思い出します。

もちろん架空の話ですが、アラジンは中国の都市に住んでおり、そこで魔法のランプを

見つけ、その威力で中国の支配者になります。

おとぎ話では、かなり省略されていますが、中国におけるイスラムの発展は、こうし

た物語からもうかがえます。

また、イスラムが、ギリシャ・ローマの哲学などの学問を大切にしたことは、よく知ら

れています。

テヘラニアン
そうです。イスラム世界は、九世紀から十三世紀にかけて、全世界をリードする科学

技術の中心圏となりました。

他の文化を破壊するのではなく、取り入れることによって、イスラムは豊かになり、そ

して世界を豊かにしたのです。

池田
他文化を吸収することが自文化を豊かにする。このことは、人類がイスラムの繁

栄の歴史から学ばねばならない教訓の一つです。