2017年2月17日 投稿者:寝たきりオジサン 投稿日:2017年 2月17日(金)22時16分37秒 通報 【第17回】ブラジル・ロンドリーナ大学リジア・ルミナ・プパト前総長 2006年2月4日 女性は太陽その力は無限! 社会に春の勝鬨を告げる 「春の初の御悦び木に花のさくがごとく・山に草の生出ずるがごとし」(御書1 585ページ)最愛の家族に先立たれ、人生の試練の冬を勝ち越えてきた一家に 贈られた御聖訓である。2004年(平成16年)の春、ブラジルから、一人の 女性教育者が希望の香風を運んでくださった。リジア・ルミナ・プパト氏。名門 の誉れ高きパラナ州立ロンドリーナ大学の総長である。「池田会長の『21世紀 は女性の世紀』との提唱に、私は諸手を挙げて賛成します」 満面の笑みに弾ける勇気。毅然とした瞳に光る鋼のような意志。この人は正義の ために戦ってこられた方だ。人間の尊厳のために戦ってこられた方だ。風雪に耐 え、戦い抜いてきた生命にのみ脈打つ「春」の歓喜の躍動を、私は感じ取った。 「私の学生時代は、軍事政権の真っただ中でした」1964年に軍政が成立して 以来、ブラジルでは言論・思想統制の嵐が吹き荒れた。ロンドリーナ大学も例外 ではなかった。当局は、学生たちの連帯を恐れ、わざと校舎と校舎を遠く離して 建設した。 講義の休憩時間は15分。次の授業を受けるためには、走って移動せねばならな い。学生たちが話し合い、意見を交換する時間を奪おうとしたのだ。同じころプ パト氏も、多くの友と、民主化を求めて敢然と立ち上がった。それに対し、牙を 剥き出しにした権力は、“見せしめ”という暴挙に出る。ある日、仲間の一人が 忽然と姿を消してしまったこともあった。苦難と戦ってこそ恐怖の時代は、実に 20年以上続いた。「池田会長を、理不尽にもブラジルに入国させまいとしたの も、この政権です。 深い深い憤りを感じています」74年、入国ビザが発給されず、私は訪伯を断念 せざるを得なかった。66年の訪問の際にも、行く先々で政治警察の監視の目が 光っていた。プパト氏も、学生を守るために戦い、大学の講師を解雇されたこと がある。だが卑劣な圧迫の烈風も、正義と信念の炎を吹き消すことはできなかっ た。むしろ、いやまして燃え上がらせた。“自由と民主主義と人間の尊厳を守る ため、生涯を捧げるのだ!”御金言に、「冬と春とのさかひには必ず相違する事 あり」「賢者はよろこび愚者は退く」(同1091ページ)と。人間は、苦難に 鍛えられてこそ光る。 ブラジルの太陽のように晴れやかな氏の笑顔も、困難と戦うなかで輝きを増した のだ。不正と抑圧に対する戦い――軍事政権から民政に移管した後も、彼女の決 心は微塵も変わらなかった。長く教育労組の活動を続けたが、正義の理想を強力 に具現化していくため、決然と政界に進出された。大学教員を続けながら、パラ ナ州の州議会議員、ロンドリーナ市の市議会議員を歴任。苦しめられた権力の側 に大胆に分け入って、今度は、その権力を、市民の幸福実現のために正しく行使 させていったのである。 「暴力・差別・偏見――虐げられてきた女性たちを、社会的にも、法律的にも、 精神的にも、あらゆる角度から守りたい」。市議会で女性局の設置を強く訴えた 。熱意が実って、市にブラジル初の「特別女性局」が誕生する。局長には、請わ れて氏が就任した。はるか歴史を遡れば、古代インドのアソカ大王が、仏教を根 底に福祉政策にも力を入れ、新設したのも、「女性のための奉仕者」と呼ばれる 役職であった。 プパト氏は、常に弱者の視点に立ち、現場を歩きに歩いて、生の声を聞くことか ら出発した。ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)に関する法整備や心 のケア。低所得にあえぐ女性のための職業訓練コースの設置等々――。女性なら ではの、きめこまやかな思いやりと誠実な行動が、放っておけば動脈硬化してし まう政治に、柔軟さと活力を生んだ。優しさと清潔さを脈動させた。「議員の半 分は女性に!」とは、恩師・戸田城聖先生の先見であった。 真っすぐな正義感と献身性を兼ね備えた女性たちの声を、強く大きく反映させて いくことこそ、真の民主政治を取り戻す大直道であろう。ともあれ、社会に希望 の春を告げゆく太陽は、女性である。40年ほど前、ブラジルの婦人部の同志に、 私は申し上げた。時代を変えていく真の原動力は、女性の祈りである。生活に根 差した女性の活動である。女性の力は、大地の力である。大地が動けば、すべて は変わる。権威の王城など簡単に崩れ、不動のように見えた山をも動かしてしま う。その力は無限だ。そこに不可能はない――と。 母は言動で模範を 平和と文化と教育、そして環境の保護を、促進するための源泉は、いったい何か ――。私に名誉博士号を授与してくださった式典で、プパト総長は明快に指摘さ れた。それは「多様性の尊重」である、と。文明、信条、民族、性別などの違い を尊重することから、寛容の精神と友好的な対話が生まれ、精神の武装が解き放 たれると言われるのである。さらに「そのための鍵は、仏法の人間主義にある」 との深い共感を語ってくださった。 こうした多様性の尊重を、父母の姿から学んだとも、感銘深く伺った。人種デモ クラシーの先進国ブラジルでも、不当な差別が残っていた時代、ご両親は進んで 肌の色の異なる子を養子にされ、他の兄妹と何一つ変わりない愛情を注いで育て られた。総長は、世界の女性たちへ、エールを贈る。「今、必要なことは、母親 自身が、自分は未来の世界市民、すなわち人間主義に立った市民を育てていると いう自覚をもつことではないでしょうか。 言葉だけではなく行動で、自分が模範となって人間主義を示していくことです。 私も、そういう決心で娘を育ててきました」世界市民の育成、人間主義の実践― ―その最先端を走り進んでいるのが創価の女性であると、私は誇り高く明言した い。 胸中に力と智慧が プパト総長は、私の宝である関西創価学園にも訪問し、学園生と語り合ってくだ さった。「冬の植物を見ると、花もありませんし、葉もありません。まるで生き ていないように思いますが、そうではありません。自分が花を咲かせる時を待っ ているのです。自分にとって一番いい時期を待っているのです」高名な植物生理 学者ならではの洞察だ。日蓮仏法にも「木中の花」の譬えがある。 冬枯れの木に、花の気配はない。しかし、春が巡り来れば、万朶と花を咲かす。 それと同様に、目には見えねども、いかなる人にも、宿命の冬を越えて、自他共 に幸福の花を咲かせゆく、仏性という尊極の生命が具わっているのだ。総長は続 けて、学園生に語りかけた。「私たちも、このような植物の生き方を手本にして いきたい。自分自身の中にある力と智慧を信じ、発揮して、どんな困難をも乗り 越えていくことです」私たちも、晴れ晴れと確信する。 人間が秘めた無窮の可能性を! 胸中に宿る自在の力と智慧を! 生命に漲る勝利の春の律動を! きょう、日本は「立春」。暦の上で「春が立つ」日である。冬の闇将軍に向かっ て、春の旭日のスクラムが快活に反転攻勢を開始する日だ。ゆえに私たちは、出 会いの時のプパト総長との約束を思い起こし、心新たに出発したい。 「さあ、魂から湧き出ずる歓喜の前進を!民衆の勝鬨が轟く世紀の春に向かって !」 プロフィール リジア・ルミナ・プパト(1954年~) ブラジル・パラナ州の科学技術高等教育長官。パラナ州立ロンドリーナ大学前総 長。サンパウロ州生まれ。79年、ロンドリーナ大学教員に。同大学動植物生物 学科長などを歴任し、2002年、初の女性総長に就任。大学の教員を続けなが ら、92年にパラナ州議会議員、翌93年にはロンドリーナ市議会議員に。20 01年、ブラジル初の市の特別女性局長に就任する。 2004年4月、ロンドリーナ大学総長として池田名誉会長に、東洋人初となる 同大学の名誉博士号を授与した。 Tweet