2016年12月20日 投稿者:まなこ 投稿日:2016年12月20日(火)08時26分34秒 通報 ◆◆ 第二章 人間を取り巻く環境 ◆ 1 人間と自然 【池田】 仏法では、自然界そのものが独自の生を保つ生命的存在であると説いています。そして、人間は、環境である自然と融和して初めて、ともに生を営み、享受できるのであって、それ以外に自己の生を創造的に発揮させる方途はない、と教えています。 仏法の“依正不二”の原理は、このような自然観に立って、人間と自然とが互いに対立する関係にあるのではなく、互いに依存し合う関係にあることを明らかにしているわけです。主体と環境の関係を分離して対立的に考えるならば、両者の真実の姿をとらえることはできません。しかも、環境とは一定不変の固定的なものではありません。たとえ同じ自然、同じ土地であっても、そこに存在する生命の主体によって、環境の存在意味がまったく違ってきます。たとえば、人間には人間の、鳥には鳥の環境があります。また同じ人間でも、環境は一人一人にとって独自のものです。その意味において、生命主体とその環境とは、一体不二の関係に立っているわけです。 仏法は、この渾然一体となった主体と環境の関係を追求していって、ついに、その原動力を宇宙に脈動する生命力に見いだしています。 【トインビー】 なるほど。しかし、ギリシア語やラテン語の教育を受け、キリスト教以前のギリシア・ローマ文学を学んだ西洋人にとって“依正不二”という概念は、馴染みのないものではありません。なぜなら、その理念は、やはり、キリスト教以前のギリシア・ローマ世界における世界観だったからです。 Tweet