投稿者:無冠 投稿日:2016年10月 9日(日)00時22分4秒   通報
全集未収録のスピーチ144編の各抜粋(聖教新聞 2006.5~2010.4)を掲示します。

2009-12-12 【新時代第35回本部幹部会 創立80周年記念第2回全国青年部幹部会】
【ドイツ・「ワイマール・ゲーテ協会」特別顕彰授与式】

■ 一、遠くドイツからお越しくださった文化の使節を、私たちは最高の礼をもってお迎えしたい(大拍手)。
〈ワイマール・ゲーテ協会の特別顕彰授与式が12日行われ、貴重な「ゲーテ・メダル」が池田SGI(創価学会インタナショナル)会長に贈られた〉
ドイツが世界に誇る大文豪ゲーテ。
彼は、1749年の8月28日、フランクフルトで生まれた。本年は生誕260周年の佳節にあたります。
かつて私は、ゲーテの生家を、妻とともに訪れました。1981年(昭和56年)5月のことです。
案内を受け、ゆっくりと見学した。往時を偲んで、ある時は感動し、ある時は心で涙しながら、長い時間、見て回った。
黄金の思い出であります。
今も世界で愛読されている『若きウェルテルの悩み』。世界文学の最高峰の一つである
『ファウスト』。ゲーテの作品は数多い。
さらにワイマールに招かれ、大臣となり、政治、教育、文化、芸術などの発展にも貢献しています。
ゲーテは自然科学の分野でも、動物学、植物学、地質学、光学など、さまざまな研究を進め、業績を残しました。幾多の指導者が敬愛してやまない“精神の巨人”なのです。
ドイツの大詩人・シラーと親友であったことも有名です。
よき人は、よき人とつきあっている。偉大な人は、偉大な人を離さないものです。
ゲーテとシラーは、ともに、名門モスクワ大学から名誉称号を贈られています。
〈池田SGI会長はモスクワ大学から「名誉博士号」(1975年)と「名誉教授」称号(2002年)を受章している〉

■ 一、どんな分野であれ、「一流」に触れさせる意味は大きい。
きょうのこの会場にも、お子さんをもつ親の方々がおられるでしょう。
子どもにゲーテのことを語れば、「お父さん、すごいな!」(笑い)と尊敬される。
頭ごなしに「こうしなさい」「ああしなさい」というだけでは、子どもも嫌になる。それよりも、よき刺激を与えることだ。偉大なものに触れてこそ、目が開かれるのです。
本来、仏法は普遍の英知を説いている。ゲーテに学ぶことが、最も価値ある人間の道に通じていくのです。

●気高くあれ!
一、それは1777年、ドイツの寒い冬のことでありました。
北風に向かって、勇んで二十八歳の若き指導者が馬に乗り、旅を続けておりました。
冷たい雹が降っても、青年は、ひるまない。ワイマールの都から遠く離れた、悩める無名の友のもとへ、青年は森を抜け、山を越えていきました。
一人を励ますために走った、この若き指導者こそ、私たちの敬愛するゲーテなのであります(大拍手)。
大変な中を、ただ友のためにと行動する。学会の活動、仏法の修行も同じです。
こういう人が偉くなるのです。このことを忘れないでいただきたい。
自分は苦労を避けて、楽ばかりしている人が、偉大になるわけがない。
一番貧しい中で、一番大変な中で、一番陰で戦った人こそが、本当に偉大な人間になるのです。
ゲーテは叫んだ。
「人間よ気高くあれ」(星野慎一訳『ゲーテ詩集』潮文庫)
ちょっとしたことで落ちこんだり、すぐにくたびれて、だらけたり、意気地なしになったりしてはいけない。
“気高くあれ! グッと胸を張れ!”──これがゲーテの心でありました。
彼は、こうも言う。
「進んで人を助け善であれ!」(山口四郎訳「くさぐさの歌」、『ゲーテ全集1』所収、潮出版社)
学会活動、仏法の精神にも通じる言葉です。
そして、「正しいことを つねに倦むことを知らずおこなえ」(高安国世訳「神性」、『ゲーテ全集第1巻』所収、人文書院)と。
ゲーテの訴えは、仏法者の行動とも、深く響き合っている。
私は若き日に、戸田先生から、「ゲーテを読んだか」「どこまで読んだか、内容を言ってみなさい」と厳しく鍛えられた。
「ゲーテのように生きなさい! 戦いなさい!」と、何度も何度も言われました。
戸田先生も私も、ゲーテが好きでした。世界に輝く大文豪です。一生懸命、読み、研究しました。
青年時代に住んでいたアパートの本棚には、ゲーテの著書がたくさん並んでいた。
また、妻もゲーテが好きで、一緒に、ゲーテについて語り合つたことを思い出します。
ともあれ、ゲーテの文学を読む人は多い。しかし、その精神を受け継いで行動を起こす人は、どれだけいるだろうか。
ここにお迎えしたオステン博士をはじめ、貴協会の方々こそ、高貴なる「ゲーテ精神」の体現者であります(大拍手)。
きょうの出会いを、私は心から楽しみにしておりました。
尊きご夫妻に、万雷の拍手をもう一度、送りましょう!(大拍手)。

●仇を討つ!
一、お母さんを大事にするのです。それを忘れてはいけない。
特に若い皆さんに、そう申し上げておきたい。
終戦のとき(1945年〈昭和二十年〉八月十五日)、私は十七歳。
わが家もまた、例に漏れず、あの戦争に苦しめられた一家でした。
戦時中、私の4人の兄は次々と戦地に召集された。
一家の柱の父も病気がちで、母の苦労は並大抵ではなかった。
その母を助けたいと思い、私は小学校6年生の時から3年間、新聞配達もしました。
昭和二十年に入ると、わが家は強制疎開で取り壊され、新しい家も空襲で直撃を受け、灰燼に帰した。どん底の中のどん底でした。本当に苦しみました。
だから私は、戦争反対です。戦争が憎い。
初代会長の牧口先生は、誤った思想を奉じて戦争を遂行した軍部政府に、真っ向から反対して投獄され、獄死されました。
第2代会長の戸田先生も、牧口先生にお供して、2年間の獄中生活を強いられました。
この獄中で、牧口先生の死を知らされた戸田先生は、独房の中で、ただ一人、涙にかきくれました。
そして、「必ずや牧口先生の仇を討つ!」と心に誓い、出獄後、平和への大闘争に立ち上がっていかれたのです。
ここに創価学会の師弟の原点があります。
戸田先生のもとで、「平和の世紀」を開くために戦った私もまた、正義の民衆の団体を弾圧せんとする権力の横暴によって、無実の罪を着せられ、牢獄に入りました。

●いかなる行動をしているか
一、こうした生死を越えた経験を通して、恩師の戸田先生が、弟子の私に何度も教えてくださったことがあります。それは、次のようなことでした。
「どんなに立派な肩書を持った人であろうとも、人間は人間である。相手の立場や地位を見て、ペコペコと頭を下げたりしてはならない」
「人間にとって大切なのは、いかなる思想を持ち、いかなる行動をしているかだ。
ゆえに人類最高の思想を学び、人々の幸福のために行動している創価の青年は、どんな人に対しても、胸を張って、堂々と、わが信念を語っていくのだ」
「一番大事なのは民衆である。創価学会は民衆の団体だ。青年が主体である。
ゆえに、どんな時も強くいけ! 勇気! 勇気だ!」と。
民衆こそ王者です。若き皆さんには、恐れるものなど何もない。
勇気をもって、希望をもって、朗らかに、また堂々と、わが胸中の正義を叫び抜いていただきたい。
それがゲーテの生き方でした。よろしく頼みます!(大拍手)

●人を活気づけるものは「対話」
一、戸田先生と私は、ゲーテをめぐって何回も何回も語り合いました。偉大な師匠だった。あらゆることを教わりました。
社会変革への燃える心を、まだ若い20代の私に対して、深く深く打ち込まれた。
そして私もまた戸田先生に、民衆のための闘争を誓ったのである。
きょうは懐かしき語らいを思い起こしつつ、ゲーテから学ぶ指針を3点、お話ししておきたい。

◆ 第1は、「対話」であり、「友情」であります。私たちでいえば、友の幸せを願い、正義と真実を語り抜く「折伏」に通じるでしょう。
ゲーテは、こんなやりとりを記している。──金よりも素晴らしいものは何か?
それは光である。 光よりも活気づけるものは何か?
それは会話である、と(国松孝二訳「ドイツ亡命者の談話」から。『ゲーテ全集第8巻』所収、人文書院)。
学会は「対話」で勝ちました。「折伏精神」で勝ちました。これからも大いにやろう!〈会場から「ハイ!」と勢いよく返事が〉
勇敢なる「対話」の人こそ、創価のリーダーである。
そして、リーダーならば、同志が本当に喜び、心から安心できる、そういう展望を示していくことです。

●「抜苦与楽」の心
一、ゲーテは、この世から苦しみを少しでも減らしたい、皆に喜びを贈りたいと願って一生を過ごした。
仏法の「抜苦与楽」の実践にも通ずる。
そのゲーテの武器こそ、「対話」だったのであります。
私も「対話」で世界に「友情」を結んできました。今や192力国・地域に、たくさんの学会の同志がおられる。
日本だけではない。世界中の民衆と「対話」を広げてきたのです。

●人間革命の前進
◆ 一、ゲーテに学ぶ第2は、「人間革命の前進」であります。
ゲーテは、人間形成の物語の中で、「世の中のいちばん役立たずに見えた」女性が、人々とともに、地道に、そして立派に活躍しゆく挿話を描く。「人間とはどんなに変りうるものか」とも記しています(登張正實訳「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」、『ゲーテ全集8』所収、潮出版社)。
人間は限りなく向上できる──これこそ、仏法とゲーテが目指しゆく「人間革命」の軌道にほかならない。
大事な一点です。
わが胸中の太陽を輝かせながら、どこまでも強く、明るく、晴れやかに、喜びの光を広げていくのです。
この希望と充実の花の道を、“華陽の乙女”女子部の皆さんは、朗らかに進んでください!
愉快な前進をお願いします!
〈「ハイ!」と女子部の友の快活な返事が〉
一人ももれなく、幸福になるのです。
大切なことは、悩みにぶつかった時に、相談できる人、信頼できる人をもつことです。
愚かであってはならない。つまらないことで、苦しんではいけない。何でも、ご両親や先輩、友人に相談しながら、賢明なる青春を送ってほしい。
私と妻は、心から、そう祈っています。

●永遠に勝利の大生命を開け
◆ 一、ゲーテに学ぶ第3は、「永遠に勝利の大生命を開きゆくこと」であります。
人間らしく、自分らしく、大いに羽はたいていける土台をつくらなければならない。
ゲーテは大病に苦しんだ。最愛の家族にも先立たれた。最も高貴な行動を貫いて、最も卑劣な誹謗を浴びた。
しかし、断じて負けずに、わが生命を威風も堂々と燃え上がらせて戦いました。
「日のある限り、活動せよ!」(末村謹治訳『ゲーテ全集第32巻』改造社)と。
そしてゲーテは、死をも悠然と見つめながら、“生命は永遠に活動を続けるものだ”と確信していた。
〈ゲーテは、「われわれの精神は、絶対に滅びることのない存在であり、永遠から永遠にむかってたえず活動していくものだ」と語っている(エッカーマン著、山下肇訳『ゲーテとの対話』岩波文庫)〉
生命は永遠である。
ゲーテの洞察は、仏法に近かった。
ともあれ、わが壮年部の皆さん!
ゲーテのごとく、師子となって戦ってもらいたい!
若々しく、はつらつと!
90歳になっても「まだ20歳ですか?」(笑い)と言われるくらいの気概でいこう!
青年たちのために、心を尽くすのだ。婦人部・女子部に最大に感謝していくのです。
威張る人は、誰からも尊敬されないものだ。
感激もなく、挑戦もなく、うまく立ち回る、要領だけの人間になってはいけない。
皆のために働けば、気持ちがいい。健康にもいい(笑い)。
私はまだ、81歳で青年の心意気です。あらゆる勝利への手を打ち、前進しています。
どうか皆さんも、最前線の友の意見によく耳を傾けながら、一段と頼りにされ、信頼される名指導者になっていただきたい。

■ 太陽が輝いて全世界を照らすように、永遠の大歓喜に生命が包まれる。その原動力が仏法です。
その反対に、悩んで、悩みに負けて、いつも不満ばかり。自暴自棄になって、人の幸福を妬む。人を蹴落としても、自分さえよければいい──そうした醜い心に支配されてしまえば、結局は不幸である。愚かです。
大歓喜の人生を生きよう!
戦おう、大いなる希望のために!
そこに人生の醍醐味がある。
自分らしく、自分の夢のために生ききって、素晴らしい毎日を送るための信仰です。
これを実行しよう!〈「ハイ!」と元気な返事が〉

●生き生きと!
一、ゲーテが生涯をかけて挑戦し続けた、教育の発展も、文化芸術の興隆も、福祉の政治も、そして人類の平和と幸福も、その根幹には、正しき生命観・生死観の確立がなければならない。
これが21世紀の焦点であります。私がお会いした世界の識者も、この点に深く共鳴しておりました。
私たちは、「常楽我浄」の生命哲学の旗を高く掲げたい。
生き生きと、若々しく進もうではないか!──そう呼びかけるゲーテの声が、私の胸に響いてならない。
ゲーテが願い求めた「人間の尊厳」のために、我らは、学会創立80周年の明年も前進しよう! 断固として、自分自身が勝ちまくっていこう! いいね!〈「ハイ!」と力強い返事が〉
わが使命の戦野に躍り出たならば、勝たなければ損である。
何のために生きているのか。何のために仏法があるか。
それを胸に刻んで、「断じて負けるな!」と申し上げたい。

一、私の青春時代、師匠である戸田先生にゲーテの詩をお聞かせ申し上げた光景は、今も心に鮮やかです。
先生の日々の薫陶は、正義が勝ち栄える社会を築きゆくためでありました。
結びに、懐かしいゲーテの詩の一節を朗読して、御礼のあいさつといたします。
「わたしはいつも人間のよろこびを謳う ただしい道をそれぬかぎり/人間は実にうつくしく/永遠に人間は偉大である」(大山定一訳「しろがねの真昼は…『ゲーテ全集第1巻』所収、人文書院」
悲しみの道ではなく、喜びの道を、そして正しい道を、まっすぐに進むのだ。
そしてまた ── 「臆することなく起って進め、/世の人々はためらい惑うとも。/気高い者が明知と勇気をもって事にあたれば、/すべてのことは成就するのだ」(手塚富雄訳『ファウスト』中公文庫)
ダンケ! ダンケ!(ドイツ語で「ありがとうございました!」)
誠にありがとうございました(大拍手)。
きょうの式典のことは、ゲーテの詩歌とともに、皆、一生涯、忘れないでしょう。
海外の友も、未来部の皆さんも、本当によく来られた。ありがとう!(大拍手)