投稿者:河内平野  投稿日:2014年11月20日(木)11時28分18秒    通報
今、世界が必要としているのはヒューマニズムである。
あらゆる利害、イデオロギー、不信感等を超えて、「人間のため」にどう心を合わせ、行動していけるか。

仏法は、そのヒューマニズムの真髄を教えている。
私たちの運動は、この《人道主義》の潮流を世界に広げていくものでもある。

きょうは、そのことに関連して、日本とソ連の間に起こった三十年前のある出来事を語っておきたい。
ちょうど、私がフランスに広布の第一歩をしるしたころのことである。

小児マヒ(ポリオ)――この病気の恐ろしさは、まだ記憶に新しい。
日本では私が会長に就任した一九六〇年(昭和三十五年)、そして翌年が、大流行の時期であった。
私も克服を真剣に祈った。

初めは、カゼに似た症状だが、やがて手足などにマヒが生じ、死にいたる場合もある。
一九六〇年には、前年の三倍、全国で五千六百人以上が感染し、三百十七人が死亡している。

バタバタと倒れていく子どもたち。
「次はわが子か・・・・・」。母親たちは、恐怖におののいた。
当時、有効とされた「生ワクチン」は、日本では使用が認められていなかった。

もっとも研究がすすんでいたソ連のワクチンを輸入できない状況であった。
それどころか、ソ連からの「生ワクチン寄贈」の申し出も、当時の政府(厚生省)からストップがかかった。

「まだ、効くかどうかわからない」と。
――しかし、その研究(試験)に、まだ何年もかかるのである。
その間に、子どもたちは、次々と倒れていく。
各地でデモや陳情、集会が繰り返された。

翌一九六一年。
また、流行期の夏が近づいてきた。
このままでは、前の年以上の犠牲者が出ることは明らかだった。
流行は続く。

ついに母親たちが立ち上がった。
「子どもたちに生ワクチンを!」。
命をかけた叫びは、全国に広がった。

【広布三十周年記念フランス総会 平成三年六月十八日(全集七十七巻)】