投稿者:ヨッシー 投稿日:2018年10月19日(金)00時22分55秒   通報
城代「おい、琉球の陣の情勢はどうじゃ」
泡浩「はっ、万全でござります。本土より家中の者どもを総動員して進めておりますゆえ」
城代「さようか。こたびの戦は安倍幕府に我が藩の存在を示すまたとない機会じゃ。ぬかるでないぞ。幕府さえ取り込めば、老齢の大殿など恐るるにたらぬ」
泡浩「承知してござります。現地の足軽どもには決戦の日より前に一本でも多く矢を射てこいと命じてございます」
城代「うむ、決戦前投矢!いつもの手じゃな」
泡浩「さいわい、決戦日は大嵐になると“悪煎茶”の目利きも予想しております。そうなれば敵方衆は戦に出るのを嫌いますゆえ、こちらの思う壺かと、はっ、はっ、は。」
城代「他には? 」
泡浩「念のため、我が藩政所の遠山濁彦(にごひこ)左衛門を差し向けて、裏工作もぬかりありません。」
城代「おお、最近売り出しの“遠山のデマさん”じゃな。背中にマイケル・グリーンの入れ墨があるとかいう。」
泡浩「更に、幕府大老のガースーこと須賀を通して、大泉進ノ介や大池百合女にも入島を指示してあります」
城代「さようか。おぬしも偉くなったものよのう」
泡浩「拙者、昔は、コーエー作の双六『信長の野望』シリーズにはまっておりましたが、今は、須賀大老との天下取りイクサが面白くてなりませぬ。官房機密御用金も使えますし」
城代「何の兵法よりコーエーの兵法じゃな。流石じゃ。だが、気を緩めるでないぞ。なにやら敵陣で当藩の旗を振っている不届きな男が いるそうじゃ」
泡浩「なーに、たった一人で何ができるものですか。案ずるには及びませぬ。先日はご城代様にもご直々、足をお運び頂きましたし、もう大丈夫でございます」
城代「ならよいが、琉球には大殿の変な思い入れがあるからのう、大殿の琉球びいきにも困ったものよ。」
泡浩「では、決戦の日も近いゆえ、拙者も琉球入りします。」
城代「たのんだぞ」

そしてその日は来た

家臣「ご城代、ご城代、大変でござります!琉球の戦が敗れましてござります!」
城代「なにー!誠か! 金津園(泡浩)は何をしておる!すぐにこれへ呼びつけえー」

そのころ琉球の高級旅籠“琉球てらす”の一室では

泡浩「おーい!酒が足らんぞー!今宵は勝利の宴じゃ!綺麗どころはおらんのかー!」
手の者「泡浩さま、泡浩さま、」
泡浩「なんじゃ、うるさいのう。ソチの不細工な顔など見たくもない。酒じゃ、酒を持ってこい!」
手の者「酒など飲んでる場合ではござりませぬ。こ、今宵、戦に敗れもうした」
泡浩「・・・・なっ、なにー!? 負けたと申すのか?!」
手の者「さようでござります!ご城代からも、大風など関係ない、すぐに江戸に戻るようにとの御沙汰でござります」
泡浩「やばいぞー!やばいぞー! 支度じゃ、支度じゃ。江戸へかえるぞー!」

江戸 信濃藩奥座敷

城代「一体どうなっておる。なぜ負けたのじゃ!」
勃樹「どうも、琉球在住の我が藩民の中に、大量の造反者が出たもようです」
城代「造反者だとー? 何故じゃ?」
勃 樹「琉球には、未だ大殿の思想にかぶれた者共が多数おったようで、、、、」
城代「くそー、いまいましい! 来る霜月の藩の日には、いよいよ“信濃世界救世教”を発表しようと準備しておるのに、その矢先に負け戦とは!」
勃樹「御意。そのために昨年には“藩憲”を発令して体制を整えておりましたのに」
城代「さようじゃ。“信濃世界救世教”の発表で、名実ともに異国を我が手中に収める段取りじゃった」
勃樹「そう、それでご城代は初代教主、先君三代に次ぐ中興の祖と、、、」
城代「そしておぬしは筆頭異国奉行に、、、、あっ、いや、余計なことを申すでない。それより、次の那覇の陣は大丈夫か?」
勃樹「このままでは危のうございます。ここは一旦手を引いてはと、、、」
城 代「そうじゃな。総力出動して、二回も負け戦というわけにもいかんな、、、」
勃樹「御意。ただ既に布陣をしいておりますが、、、」
城代「撤収じゃ!撤収して今回の負け戦も静かにほとぼりをさませ!」
勃樹「それが得策かと。巷の瓦版屋には騒がぬよう“通電”を通して圧力を掛けておきます」
城代「よし。藩内もこたびの負け戦の不満が語られぬ様、休暇を取らせ、藩民が集まらぬよう令を出せ」
勃樹「御意。ところで、瓦版屋で思い出しましたが、“週刊金剛石”なる瓦版が話題になっているようで」
城代「して、それは如何なる内容じゃ?」
勃樹「なにやら大殿お馬番衆の一部が藩への不満をぶちまけているとか、、、」
城代「ええい、いまいましい!あっちも、こっちも!」
そこに隠密犬・弓の声、「お呼びでしょうか」
城代「なんじゃ!脅かすな! 助兵衛おぬしか?いちいち顔を出すな!キサマは頼綱のところで控えておれ!うっとしい。」
勃樹「どうもこのところ、各地でも造反の動きがあるようで、、、」
城代「締め付け、処分はしかと行っておるのか!」
勃樹「やってはいるのですが、、、」
城代「さらに徹底せい! 琉球のようなことが本土で起こったらたまらん。大殿が息を吹き返してしまうぞ」
勃樹「それだけは避けねばなりませぬ。各地の小役人どもに取り締まりを強めるよう、重ねて申し付けます」
城代「この分では、来る霜月の藩の日も厳戒態勢で行わねばならぬな」
勃樹「早速、手を打ちまする」