投稿者:寝たきりオジサン 投稿日:2017年 1月30日(月)08時02分57秒   通報
栃木県・井原さん女性54婦人部副本部長

聖教新聞2006年3月25日
長女が自動車事故で頸椎骨折の重傷

1993年(平成5年)9月10日の夜、長女が乗用車を運転中に事故を起こした。対向車
線からはみ出してきたバイクを避けようとして横転、車は大破した。幸いにも同
乗していた友人やバイクの運転手は無傷だったが、長女は重傷だった。

「首の第4頸椎を脱きゅう骨折。頸髄(首部分の脊髄)も損傷しています。大変、
申し上げにくいことですが、今夜がヤマです。もし命が助かっても、首から下は
一生、動かないでしょう」井原さんは夫とともに医師の説明を聞いた。

◇長女退院、しかし首から下は動かない

病院の献身的な努力により、長女は一命を取り留めた。が、翌朝には首をおもり
で牽引するため、頭蓋骨に4つの穴を開ける手術を受けた。「ドリルのすさまじ
い振動は今も忘れません。手術というより工事のようでした」と長女は言う。

10月に入ってすぐ、長女は肺炎が悪化し、呼吸するのがやっとの状態が続いてい
た。ある日、病床から、か細い声で、ぽつりとつぶやいた。「お母さん、御書に
生命は永遠って書いてあるよね。だったら私、今世はもういい……」

その直後だった。長女の血圧が一気に低下。そのままスーッと眠るように意識を
失った。医師や看護師が駆けつけた。気道確保のため気管切開の緊急手術を施し
、命をつなぎ留めた。

井原さんは、病院のベランダに出て、無我夢中で題目を唱えた。「負けないで!
お母さんが祈っているから、負けないで!」祈りが通じたのだろう。その夜、長
女は意識をとり戻す。懸命に生きようとする娘を見ると、「一生、動けないなん
て、口が裂けても言えませんでした」

事故から3カ月後の12月、長女は首から下は動かないが、退院をすることができ
た。

◇井原さんが難病「多発性筋炎」発病

翌1994年1月、井原さんは食欲がなく、倦怠感がはげしいので、大学病院で診察を
受けた。精密検査の結果、診断は「多発性筋炎」。筋肉の障害により、疲れやす
くなったり、力が入らなくなったりする、原因不明の厚生労働省指定の難病であ
る。

直ちに入院。体重が50キロから28キロに減った。肺に炎症を起こし、呼吸困難と
なり、気管切開の手術を受けた。人工呼吸器の世話になった。

夫と長男(27)が力を合わせて長女の食事の世話などをしてくれ、井原さんの病院
にも通ってくれた。長男は、病院と学校を往復しながら、母のそばに寄り添った。

特に、井原さんに勇気と希望を与えてくれたのが、夫や息子が届けてくれる、長
女からの手紙だった。

「お母さんへ、私もがんばっているから、お母さんもがんばって」「お題目をた
くさん送っているから、絶対に大丈夫だよ。安心してください」

自分のほうが大変な体なのに……。しかも動かないはずの手で一生懸命書いてく
れた。そう重うと涙があふれた。井原さんは心に固く誓った。「応援してくれる
長女のために、家族のためにも絶対に病魔に打ち勝って、一日も早く退院しよう」

同年9月、医師も驚くほどの早さで、井原さんは退院を果たした。まだ歩くことは
できず、車いすの退院だった。帰宅後はベッドの上で、国立リハビリセンターに
入所している娘の回復を願って真剣な唱題を続けた。

◇長女はリハビリに励む

井原さんが入院中の1994年5月、長女が埼玉県所沢市の国立リハビリセンターに入
所し、生きぬくための訓練を開始した。特殊な装具を使って、食事や字を書く練
習、ひじを固定して、いすに座るリハビリを何度もくり返した。

体を動かすたび、ジーンと痛みやしびれが全身に走る。しかも、リハビリの途中
、医師から初めて体の回復に限界があることを告げられた。だが、長女は弱音一
つ吐かずにがんばった。同様に病魔と闘う母の存在があったればこそだった。

◇暗く長い冬を抜けた

1995年2月、長女は、とうとう車いすを自分で運転できるまでに回復し、退所し家
に帰った。家族4人が自宅にそろったのは、約1年半ぶりだった。

「その日、家族みんなで勤行をしました。家族の祈りが一つになったときの感動
は、生涯、忘れることができません」(井原さん)

井原さん自身も、1994年2月の退院からずっと車いすの生活だった。そして退院か
ら1年半を過ぎて、自分の足で歩けるようになった。学会活動に参加できること
が何より幸せだった。

自分で起きることすらできずに、一時は家にこもりがちだった長女も、女子部の
友に励まされて、折伏に挑戦するようになった。自らの信仰体験を通して3人に
弘教を実らせた。

さらに昨春、長女が青年部教学試験1級の受験を決意した。「教材の載った『大
白蓮華』のページを1枚1枚めくるのが闘いでした。書いて覚えることができな
いため、寝たきりのまま唱題しては難解な仏法哲理を頭に焼き付けていったんで
す」先月28日、長女は口頭形式で受験し、見事、合格した。

「長女の合格を聞いたとき、わが家にも春が訪れたように感じました。やっと暗
く長い冬を抜けられました!」と井原さんは話す。