投稿者:まなこ 投稿日:2016年11月28日(月)08時22分0秒   通報
【池田】 現在までメンデル学派とルイセンコ学派が、それぞれの立場で遺伝現象の解明に努めてきた努力と、その科学的成果は、たしかに正当に評価すべきでしょう。しかし、遺伝現象をより深く、より正しく解明するためには、生命それ自体と環境との相互関係に着目し、そこに視座をおいて遺伝という現象をみていくことが必要であると思います。もしこのような生物体と環境条件との関連性に着目するなら、メンデル学派やルイセンコ学派が今日まで解明してきた遺伝現象に関する成果を踏まえながら、なお一層広い視野からの、遺伝現象に関する全体的実像が浮かび上がってくると考えるのです。

【トインビー】 遺伝と環境という区別も、おそらく実際には区分できない“実在それ自体”に対して、人間がやむをえず行なっている知的分析のうちの一つなのでしょう。人間がそうせざるをえないのは、その知的理解力に限界があるからです。
一個の生物体において特定の遺伝子の組み合わせが確立され、それが生殖作用を通じて種の一員から次の一員へと遺伝されるということは、全宇宙を包含する一個の有機体中に一つの中心が設定されることをも意味します。ただし事実上は無数の生物がそれぞれ局部的、暫時的な中心として競い合うわけですから、そのうちの一個のまわりに宇宙全体を方向づけようとするこの企ても、当然、部分的・暫時的なものにすぎません。