投稿者:ヨッシー 投稿日:2016年11月23日(水)09時55分46秒   通報

其の七

(頼ちゃん、頼ちゃんよー)

頼綱「おっ、その声は、第六天の、」

(どうだい、うまいこと運んでるかい?)

頼綱「拙者にぬかりはないわい。皆行の守にはしっかり焚きつけといたしな」

(そうかい。だが隠居には気を付けな、奴はお前さんの御禁制西洋絵巻を使った銭洗の仕掛けまで見抜いているぜ)

頼綱「なあに、それももう手は打った。絵巻の処理の相手は外国の宮家だ。こんどは幕府の隠密や勘定奉行だって手は出せんわい」

(さすがだねー)

頼綱「それより、、、、」

(なんだい、なにか心配事でもあんのか)

頼綱「うむー、城代の腹がどうも決まらん。まだ迷いがあるようだ」

(なーに心配いらねーよ。俺の方からもくすぐってるからな。もうひと押しさ)

頼綱「城代は事務方あがりだからどうも腰が引けてるところがある。前回の丸衆峠の戦の時も前大老の秋谷を引っ張り出して頼っていたくらいだ。おかげで前大老がまた復権しはじめてるぞ」

(いいじゃねーか。前大老はオヌシや原田城代以上に殿が嫌いだ。だから今度の藩乗っ取り作戦にはもってこいの男だよ)

頼綱「なるほど。確かにな。だが城代の腹をバチッと決めさせる妙手はないのか」

(あるぜ)

頼綱「なんと、早く申せ」

(城代にだな、正木八百の守がご城代の失脚を画策してると入れ込むのよ)

頼綱「それは本当か?」

(馬鹿だのー、真っ正直で真面目しか取り柄のない八百の守にそんな芸当ができるものか)

頼綱「しからばいかに吹き込むのだ?」

(知っての通り八百の守は殿一筋の男だ。同じように奴の家中はそういう輩が多い。最近その連中の一部が現体制に不満を募らせている。殿さまが表に出なくなってからそれが一層大きくなっているだろ)

頼綱「そのことは拙者も聞いてはいるが」

(だろ、だからさ、その連中を焚きつけてんのは実は八百の守だと城代に触れ込むのよ)

頼綱「なるほど」

(しかもこのままでは、殿さまが目を瞑った後に当代に就くのは八百の守だぜ。そうなりゃアンタの皆行の守による傀儡計画も水の泡さ。だからさ、)

頼綱「そうか、一石二鳥ってわけだな」

(やっとわかったかい。こいつを仕掛けりゃ城代の腹はきまるよ)

頼綱「よし、早速進めよう」

(つづく)

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