投稿者:ヨッシー 投稿日:2016年12月 8日(木)12時02分59秒 通報
其の二十
頼綱「助兵衛! 助兵衛はおるか! 『あっちも』と言えば?」
助兵衛「・・・・」
頼綱「ん? 『あっちも』といえば!!」
助兵衛「そっちも」
頼綱「な、なんじゃと? それはワシへのあてつけか? しかと応えよ!」
助兵衛「・・・こ、こっちも・・・」
頼綱「よし、出よ! よいか、即刻、この密書を竹林屋(ちくりんや)の誠治(せいじ)に届けるのじゃ!」
助兵衛「はっ、では直ちに、、、、(キャイーン)」
法務庵奥の院
助兵衛「(頼綱さま! 竹林屋誠治さまが、お見えでございます)」
頼綱「うむ、奥へ通せ!」
誠治「御免。かような夜中にお呼び出しとは、例の件でござるか?」
頼綱「そうじゃ。どうも上手く進まんので困っておる」
誠治「なんと、折角、牛角散歩なる者まで誑し込み、やっと京都本漫寺と話を付けたのに、そんなことでは、今までの苦労が水の泡に」
頼綱「わかっておる。だが、古株の役臣連中の抵抗も強くてな」
誠治「何を仰せられまする。既に新城の“祈願の間”に安置すべく、大金をかけて黒鉄造りで仕立ててございます。それを今更・・・」
頼綱「うむう、、、」
誠治「しかも本来なら、来る藩律改正に間に合わせ、今年、新城に安置し、明年には小版を作って、取り換え作業で一儲けするとのご計画ではありませなんだか」
頼綱「そうじゃのう、、、、何か良い手は無いか?」
誠治「わかり申した。役臣たちへの袖の下をご用意いたしましょう。計画通りに進みさえすれば、元は充分取れますゆえ」
頼綱「なるほど、それは良い」
誠治「もちろん頼綱さまにも更なる御礼をはずみまするが、、、ま、ひとまず、こちらをお納め下され」
頼綱「ん、いつもの山吹色か? 竹林屋、お主も悪(ワル)よのう」
誠治「いえ、いえ、大目付さまほどでは・・・」
二人「はっ、はっ、はっ」
頼綱「役臣たちへも袖の下とは、さすがは“さんたくろーす”、もとい、“参牢多数(さんろうたすう)”じゃ。悪知恵がはたらくのう」
誠治「しっ、それは、拙者の忍び名、声が大きゅうございます」
頼綱「なに、心配無用じゃ、聞いておるのは床下におる助兵衛だけじゃ。のう、助兵衛!」
助兵衛「ワォーン」
誠治「おや、頼綱さまは犬をお飼いで?」
頼綱「いや、ただのケダモノじゃよ」
助兵衛「・・・・」
(つづく)
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